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2018年12月16日日曜日

All's Fair at the Fair(博覧会へ行こう)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1938年8月26日
評価:★8


奇抜なアイデアと美しい背景美術が魅力的な傑作


『カラー・クラシック』第25作。
前作『スパンキー登場(Hunky and Spunky)』は「シリ―・シンフォニー」の二番煎じ的な作品だったが、本作はフライシャー特有の都会的なセンスが遺憾なく発揮されており、文句なしに楽しい傑作となった。チーフアニメーターはマイロン・ウォルドマンとグラハム・プレイス。同時期のカラー・クラシックやベティ・ブープといったシリーズの作品を数多く担当した常連アニメーターである。

ある田舎っぽいカップルが、馬に乗って万国博覧会に訪れる。そこではインスタント・ハウスやオレンジジュースの自動販売機といった珍発明の数々が展示されており、その面白さにカップルは大喜びする。次に2人は美容室へと赴くが、なんとメイクや調髪をしてくれるのは全てロボット。田舎っぽい風貌から一変し、見違えるほど都会的で綺麗になった2人はダンス会場へと向かう。
ダンスミュージックの演奏はもちろんロボット、ダンスパートナーもロボットである。ラテンとスウィングのリズムに合わせて楽しく踊った後の2人はいよいよ会場を後にする…のかと思いきや、なんと自動車の自動販売機があるではないか。男は組み立て式のロードスターを購入し、急いで組み立てる。組み立てが完了すると、2人は車に馬を乗せて物凄いスピードで会場を後にするのだった。

かつての『ベティの発明博覧会(Betty Boop's Crazy Inventions)』や『グランピー』シリーズで発揮された奇抜な珍発明のアイデアが再びたっぷりと楽しめるのが、本作の最大の魅力である。
フライシャーはこうしたSF調の作品をサイレント時代から得意としており、後の「スーパーマン」シリーズもこうした作品群の系譜の一つと言えるだろう。事実本作では、「スーパーマン」を彷彿とさせるモダンで魅力的な美術背景が全編に亘って用いられている。
ギャグやストーリー性こそ薄く単純な科学礼賛に徹した内容ではあるが、その魅力は現在観ても全く色褪せていない。むしろ、こうした科学技術に純粋な夢を抱けなくなった現代だからこそかえって魅力的に映る、再評価されるべき傑作なのかもしれない。
残念ながら、本作以降都会的なセンスが光るモダンな作品は「カラー・クラシック」から二度と産み出されなかった。フライシャー・スタジオは、こうした傑作を生みだしつつもシリーズの作風をよりディズニー調な物へと変化させていったのである。

 

※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland

2018年11月8日木曜日

The Gallopin' Gaucho(ギャロッピン・ガウチョ)

監督:ウォルト・ディズニー
試写日:1928年8月2日
公開日:1928年12月30日
評価:★8

『ミッキーマウス』の変化


前作「プレーン・クレイジー(Plane Crazy)」の試写から約3か月後、ディズニーは再びネズミを主人公にした短編を製作する。この作品が試写された8月にディズニー製作分のオズワルドは終了したため、恐らくこの作品はミンツとの契約終了後に製作されたと思われる。オズワルドと並行して製作された「プレーン・クレイジー」とは異なり、こちらは本当に0からのスタートだったのだ。
作画も前作に引き続きアブ・アイワークスがほぼ単独で手がけたと思われる。ただこの頃ウィルフレッド・ジャクソンがスタジオに入社しており、ウィルフレッドとレス・クラークがヘルプで作画したシーンも幾つかあるかもしれない。(ウィルフレッドは次作「蒸気船ウィリー」でなんと音楽を担当したのだ)

お尋ね者のガウチョ、ミッキーはダチョウに乗って酒場へと向かう。酒場でミッキーはダンサーのミニーと共にダンスを踊っていると、そこに現れたのが荒くれ者のピート。ピートはミニーを連れ去ってしまうが、ミッキーも酔っ払ってしまったダチョウに乗ってピートを追いかける。ピートのアジトに辿り着いたミッキーはついにピートと決戦。機転を利かせた戦法で見事勝利したミッキーは、前作では叶わなかったミニーとの熱いキスを交わすのだった。

この愉快な短編は、2作目にしてミッキーマウスというキャラクターが2つの面で変化した作品といえる。
まず、デザインが変化した。前作ではフィリックスのような大きな白目が特徴だったが、本作の後半部分からは現在でもお馴染みの黒目がちなデザインになっている。また、ブーツも今作からの着用である。
そして、性格も変化した。前作ではいたずらっぽい好色な面が目立っていたが、本作では一転、勇敢な正義の味方『ガウチョ』を演じている。後のミッキー短編でも本作のようなメロドラマ的な物語は何度となく用いられたが、本作はミッキーが「ヒーロー」としてフィーチャーされた最初の作品といえる。(とはいえ、高笑いしながら煙草を吸い酒を飲み干す荒っぽい所作は、現在のパブリックイメージとは似ても似つかないが…)
また、トーキー版の音楽を担当したカール・ストーリングにとっても重要な作品である。彼は元々映画館で無声映画のための伴奏音楽の演奏や楽団の指揮などを行っていたのだが、恐らく本作と「プレーン・クレイジー」が彼が初めて音楽を担当したアニメ―ションだったと思われる。1930年代後半以降ワーナーにて伝説的な功績を残す事になるストーリングだが、本作は彼の原点なのだ。

本作はストーリーが主体であり、ギャグ中心だった「プレーン・クレイジー」に比べると視覚面での楽しさは薄れている。だが、「ミッキーマウス」というキャラクターの変遷を考える上では重要な作品といえるだろう。そして本作はその完成度の高さにも関わらず、またも配給会社を獲得する事ができなかった。
だが、ディズニーに訪れる大きな好機は、もうすぐそこまで来ていた。



収録DVD:ミッキーマウスDVDBOX vol.1

2018年10月29日月曜日

Felix the Ghost Breaker(フィリックスのオバケ騒動)

監督:オットー・メスマー
公開日:1923年1月1日
評価:★8

「幽霊は君を求めている」


シリーズがいよいよ大衆からの支持を獲得し、作品の質も向上し始める1923年に製作された作品。

フィリックスが墓場で寝ていると、うなり声と共に突然幽霊が現れる。幽霊にいたずらされて怒ったフィリックスは、幽霊の行く先を追う。すると幽霊はある農夫の家へと忍び込み、彼や彼の家畜を散々に苦しめているのだからさあ大変。農夫は警察に助けを求めるが、さすがの警察も幽霊には歯が立たない。
そこで今度はフィリックスが幽霊退治を試みる。散々に痛めつけられてしまうフィリックスだったが、機転を利かせて幽霊を追い詰めてみるとその正体はなんと不動産屋。恐怖につけこんで農夫に家を売らせようとしていたのだ。農夫が飼っているロバが彼を遠くへ突き飛ばし、物語は終わりを迎える。

フィリックスのデザインは依然としてリアルな黒猫に近く、彼らしいパーソナリティーを得るまでには至っていない。キャラクターのパントマイムを中心とした作画もまだこなれておらず、堅い印象を受ける。作画やデザインの面でフィリックスに変化が見られるようになるのは、メスマーのアシスタントだったビル・ノーランが『ラバーホース・スタイル』と呼ばれる独特の作画スタイルを確立する1924年頃からである。
しかし、どこか毒のあるユーモアや前衛的な怪奇描写など、後の作品に繋がる要素がこの作品からは多々見受けられる。特に、フィリックスが幽霊に襲われるシーンの魅力は現在でも全く色褪せていない。
メスマーはハイコントラストな画面作りの名手であり、フィリックス終了後(1937年以降)も30年以上に亘りネオンサイン用の影絵調アニメーションを多数制作していたという。[参考] 本作でもその手腕が存分に発揮されたといえるだろう。
例によって背景や人物は全て単色で描かれているが、この作品ではそれが一種の様式美を生み出しており、作品全体に漂う恐ろしい雰囲気を演出する事に成功している。
独特の怪奇描写が素晴らしい、メスマー版フィリックス中期の傑作である。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX (DVD2枚組)

2018年10月18日木曜日

The Cookie Carnival(クッキーのカーニバル)

監督:ベン・シャープスティーン
公開日:1935年6月29日
評価点:★8

まさに「お菓子」のような甘い魅力を持つ傑作


シリー・シンフォニー第53作。公開年は1935年、この年には他に『うさぎとかめ(The Tortoise and the Hare)』『音楽の国(Music Land)』『誰がコック・ロビンを殺したの?(Who Killed Cock Robin?)』といった傑作群が立て続けに発表された。1930年代のカートゥーンを代表するこのシリーズも、30年代中期に差し掛かりまさに円熟の域に入っていたと言える。
さて、この作品はタイトル通り「お菓子の国」を舞台にした作品で、登場人物たちも皆クッキーなどのお菓子を擬人化したキャラクターとなっている。背景美術もお菓子がモチーフとなっており、同時期のシリー・シンフォニー作品の中でも異彩を放っているといえるだろう。

お菓子の国では、今日は楽しいカーニバルの日。カーニバルでは、一番美しい女を女王にするためのコンテストが開かれていた。そんな賑やかなカーニバルをよそに、綺麗な服を持っていないためにコンテストに出られないと嘆くクッキーの女の子。たまたま女の子の近くを通りかかった浮浪者のクッキーは、お菓子を使って女の子を美しい女性に仕立て上げてやるのだった。
さて、めでたく彼女はコンテストに出場。圧倒的な美貌により見事優勝し、女王に選ばれる。女王が決まったのなら王様も決めねば、という事で今度は王様のコンテストが開かれる。天使のケーキや悪魔のケーキなどたくさんの候補者が集まるが、女王はどれもお気に召さない様子。(この時の女王の表情が実にカワイイのだ)
それならと審査員自らが王様に立候補するが、そこへ現れたのが浮浪者のクッキー!女王は「王様に何をするの」と叫び(浮浪者クッキーの帽子は、守衛に殴られた時王冠のように割れていたのだ)、浮浪者のクッキーは王様に選ばれる。

王様が選ばれたことでパレードの盛り上がりは最高潮に達し、二人は熱いキスを交わすのだった。

さて、この作品ではアイワークス・スタジオから移籍してきたばかりのグリム・ナトウィック、テリー・トゥーンから移籍してきたばかりのビル・タイトラという二人の敏腕アニメーターが作画に大きく携わっているという点でも興味深い。
ナトウィックは浮浪者クッキーが女の子を美しい女王に仕立て上げるシーン、タイトラは天使のケーキと悪魔のケーキがダンスをするシーンをそれぞれ担当しているが、いずれのシーンもこの作品の中で特に印象深い場面である。
特にナトウィックが担当したドレスアップのシーンは、アニメ史に残る名場面といえるのではないだろうか。ベティ・ブープの生みの親であり後に白雪姫の作画にも携わる彼がアニメ―トした女の子の美しさ、可愛さ、色気は全く並大抵ではない。
フライシャー時代の荒っぽさがまだまだ残っており洗練されたアニメーションとは言い難いが、独特の野暮ったい作画の癖にまで一種の愛らしさを覚えるのである。
往年のチャップリンを彷彿とさせる浮浪者クッキーも、なかなか味わい深いキャラクターで好印象だ。(声はディズニー御用達であるピント・コルヴィッグが好演している)
まさにお菓子のような甘い魅力を持つ、素敵な作品である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

2018年8月2日木曜日

Rival Romeos(ライバル・ロメオズ)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1928年5月5日
評価:★8

『ミッキーマウス』の原点ともいえるギャグが盛りだくさん


1928年に入り、デザインが丸っこくなって後のミッキーマウスのようなプロポーションになったオズワルド。アニメーションの質も飛躍的に向上し、この頃から後の『ミッキーマウス』『シリー・シンフォニー』といったシリーズに通じる魅力が垣間見えるようになる。
このギャグに溢れた愉快な短編も、そんな1928年度の作品。作品単体でも魅力的な本作だが、この作品を語る上でどうしても外せない点が一つある。それは、数あるオズワルド作品の中でも、後の短編に使い回されたギャグが非常に多いという事なのだ。

彼女のオルテンシアに会いに行くオズワルド。その後ろにいるのは、ブルジョアな身なりをした恋敵ピート。2人は車で競争するが、なんとかオズワルドが先にオルテンシアの家に到着。オズワルドは彼女に歌をプレゼントしようとするが、ヤギに楽譜とバンジョーを食べられてしまう。仕方なくオズワルドはヤギをオルガンに見立てて音楽を演奏するのだった。
ところがそれをうるさく思った隣人の猫が花瓶や額縁を投げてくる。オズワルドがそれらを避けるのに必死になっていると、ようやくピートがオルテンシアの家に到着。二人はオルテンシアを力ずくで取り合いっこしたため、オルテンシアは激怒してしまった。
結局オルテンシアは三番目にやってきたのっぽの犬と一緒にデートに出かけてしまい、ピートとオズワルドはお互いの腰を蹴り合うのだった。

テンポが良くギャグも豊富、それにアニメーションも流麗で、作品単体で観ても十分に楽しい本作品なのだが、注目すべきなのはそれだけではない。
前述した通り、この作品には後のディズニー作品、そしてアイワークス・スタジオ作品に流用されたギャグが数多く見られるのだ。以下、流用されたギャグを筆者が気付いた範囲内で列挙する。

1.冒頭のオズワルドとピートが車で競争するギャグ
『Ragtime Romeo』1931年
(カエルのフリップ、アイワークススタジオ作品)
2.楽譜にハエが止まり、音符と間違えて弾いてしまうギャグ
『名指揮者ミッキー(The Barnyard Concert)』1930年
(ミッキーマウス)
3.オズワルドの口が画面一杯に広がるギャグ、ヤギが楽譜とバンジョーを食べてしまうギャグ、ヤギをオルガンに見立てて演奏するギャグ
『蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)』1928年
(ミッキーマウス)
4.隣人が壺や額縁をオズワルドに投げつけるギャグ
『カーニバル・キッド(The Karnival Kid)』1929年
(ミッキーマウス)

と、一つの短編内で4つのギャグが後年使い回されているのである。しかもリメイク作としてではなく、それぞれ別作品でギャグのみ拝借しているのだ。特に、ヤギのギャグに関してはあの『蒸気船ウィリー』で作品の要となる要素として再利用されているのだから面白い。
『ミッキーマウス』の原点は、やはりオズワルドだったのだ。



収録DVD:オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット 限定保存版

2018年7月20日金曜日

Mask-a-Raid(ベティの仮装舞踏会)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1931年11月14日
評価:★8

シュールなギャグが次から次へと飛び出す傑作


『トーカートゥーン』第28作であり、シリーズ中で初めてベティ・ブープが完全な人間として登場した作品である。(今までは長い耳だったものがイヤリングになっている)
更にベティのデザイン変更と併せて、今まではあくまでもビン坊が主演だったのが今作を以ってベティ・ブープが主演となり(タイトル上部に大きく「Betty Boop in」と出る)、ビン坊は脇役に甘んじる事となる。
そんなシリーズの転機点となった本作品だが、これがなかなかの傑作に仕上がっている。

仮面舞踏会にやって来たベティは女王の座につくのだが、王様にちょっかいをかけられ憤慨する。そこへ先程まで楽団の指揮をしていたビン坊が仮面を持って現れ、王様と軽妙な歌のやり取りをする。(歌っているのは「Where Do You Work-a, John? 」というノヴェルティ・ソング) 仮面が王様の相手をしている間にビン坊はベティとふたりで会場を行進。奇妙な舞踏会の参加者たちも音楽に乗せてノリノリで行進する。
歌が終わると王様とビン坊がベティの奪い合いを始める。ここでベティのスカートがまくれ上がるという下品なギャグが挟まれるのだが、こういった露骨なギャグはヘイズ規制前である当時ならではと言えるだろう。
今度はベティが『You're the One I Care For』というロマンチックな歌を歌い始め、2人に決闘するようお願いする。
ビン坊チームと王様チームの二軍に分かれて剣術試合が始まり、またも音楽に合わせてノリノリで剣を振りかざす。この辺りのギャグのテンポの良さとシュール加減は素晴らしい。
激闘(?)の末にビン坊が負けてしまい牢屋行きとなるが、ビン坊を監獄へ連れていく騎士が兜を外すと実はベティ。ベティに「結婚してくれない?」と言われたビン坊は歓喜のあまりフライシャー十八番のスキャットを歌い始め、最後は目の中に「THAT'S ALL!」という文字が出て終了する。

この時期のフライシャー作品を文章で解説するなんて不可能かもしれない。なんてったってあのシュールな面白さは粗筋では決して味わえないのだ。とにかくキャラクターがノリに乗って無駄に動きまくる。本作品では「フライシャーあるある」な繰り返しの動作も少なく、常にキャラがくねくねと動き回るのだから最高だ。
何よりラストのスキャットの素晴らしさ。目がダンスをし、文字に変わるというシュールなギャグもさることながら、あの絶妙なトリップ感覚は格別である。
作画者は不明だが、シェーマス・カルへインとアル・ユーグスター辺りではないかと私は勝手に推測している。(デザインや動きの癖がそれっぽいような気がする)
ちなみに登場する王様は、「ベティの将棋合戦(Chess-Nuts)」に登場した爺さんと同一人物である。ベティの事を一方的に好いており、ちょっかいを出すという役柄まで同じ。この頃のベティはよく貞操を狙われる。




(作中で歌われる挿入歌「Where Do You Work-a, John? 」)

2018年7月8日日曜日

The Shooting of Dan McGoo(アラスカの拳銃使い)

監督:テックス・アヴェリー
公開日:1945年4月14日
評価:★8

アラスカで繰り広げられる過激なギャグの数々


ドル―ピーが出演する2番目の作品。とはいっても前作『つかまるのはごめん(Dumb-Hounded)』から約2年のブランクを経ての公開であり、この間にアヴェリーの作風は更に過激に、そして破天荒になっている。この作品も、オオカミの狂気じみたリアクションや洒落の効いたギャグが満載、そして何より美女のセクシーさがいかにも全盛期のアヴェリーらしい一作である。
作画はディズニー出身の敏腕アニメーターエド・ラヴ、アヴェリーと同じくウォルター・ランツ出身のレイ・エイブラムス、そしてプレストン・ブレアの3人。特にブレアは、『おかしな赤頭巾(Red Hot Riding Hood)』を彷彿とさせる美女の色気ムンムンのダンスシーンを担当しており、特筆すべきである。

極寒の地・アラスカにある酒場『マラミュート・サルーン』は、無法者たちが酒浸りになりながら撃ち合いを繰り返す無法地帯と化していた。そんな酒場に突如オオカミが現れ、お客たちを脅かす。美女ルーのダンスにオオカミはメロメロ、その興奮の仕方ときたら椅子をぶん投げるわ目が飛び出るわと大変な騒ぎ。興奮極まったオオカミは美女を誘拐する事にしたのだが、そこへ現れたのはドル―ピー演じる「早撃ちマグ―」。激闘の末見事オオカミを退治したドル―ピーだったが、美女にキスされると彼もたちまちオオカミのように激しく興奮し、最後はお馴染みの『ぼかぁ幸せだ』を言い放つのだった。

この時期(1945ー48年頃)のアヴェリー作品はまさに絶頂期に差し掛かっており、過激なギャグ、時折挟まれる楽屋オチ的なネタ、キャラクターのオーバーなリアクション、そして作品全体に満ち満ちている狂気、どれをとっても完成度が高いのだ。その強烈なテンポの良さは、ある種のカタルシスすら覚える。(もっとも、アヴェリーも50年代になると作風がガラリと変わり、UPAを彷彿とさせるシニカルな作風へと転向するのだが…)
この作品も、狂気度は薄いが例外ではない。特に美女のセクシーなアニメーション、そしてそれに興奮するオオカミのリアクションぶりは抱腹絶倒ものである。もはや芸術作品の域。最高。



収録DVD:Tex Avery's Droopy: The Complete Theatrical Collection

2018年6月29日金曜日

Hold It(猫じゃ猫じゃ)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1938年4月29日
評価:★8

『猫が叫ぶと世界が止まる』


『カラー・クラシック』第23作。公開前月に、フライシャー・スタジオはスタジオ初の長編作品『ガリバー旅行記(Gulliver's Travels)』の製作に向けて本拠地をニューヨークからフロリダ州マイアミに移している。
この作品はスタジオがマイアミに移転してから初となる『カラー・クラシック』だが、ニューヨーク的なノリがまだまだ健在、なかなかの傑作に仕上がっている。
作画はデヴィッド・テンドラー、後身のフェイマス・スタジオでも20年以上に亘って作画に携わるニコラス・タフリ。両者とも後期フライシャー・スタジオ、そしてフェイマス・スタジオを代表する存在である。

真夜中に家から追い出されてしまった猫たちが裏庭に集まり、楽しくジャズに興じる。指揮を執る黒猫が『Everybody Hold!(止まれ!)』と叫ぶと、不思議なことに音楽も、猫も、木から落ちるリンゴも、何もかもが止まってしまう。
猫たちはこの騒ぎで目を覚ましてしまった犬に追いかけられるが、『止まれ!』の合図を猫たちが叫ぶと犬も止まる。これを利用して猫たちは犬を散々にやっつける。後年のテックス・エイヴリーを連想させるこの格闘シーンはギャグのタイミングもアイデアも素晴らしく、この作品が傑作たる所以である。
終いにはこてんぱんにやられてしまった犬を横目に、猫たちは勝利の歌を高らかに歌うのだった…が、今度は目を覚ました人間にやっつけられてしまうのだった。

猫が奏でるコーラスや軽快な劇伴音楽も楽しい本作だが、見どころはやはり『猫が叫ぶと周りにある物が全て止まる』という素晴らしくバカげた、そして魅力的なアイデアだろう。『インク壺』以来、何度も用いられてきた楽屋オチ的ギャグの一環でもある。中でもダイナマイトを加えさせた所で犬を停止させ、ダイナマイトの口火だけが動いて大爆発を起こすというギャグの、その痛快さ。
チャカチャカ動くアニメーションは、30年代終盤にしては少々古臭い。だが、冒頭のステレオプティカル・プロセスを用いたシーンの美しさは格別で、ギャグに満ちたこの作品の良きスパイスとなっている。『シリー・シンフォニー』の亜流じみた作品が目立つこのシリーズの中で、こうしたギャグ物の傑作が生まれたのは驚くべき事である。恐らくシリーズ唯一とも言えるのではないだろうか。
アニメーション研究家の森卓也氏も、名著『アニメーション入門』でこの作品を取り上げ、称賛されている。



※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland

2018年5月23日水曜日

Wise Flies(エロぐも)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年7月18日
評価:★8

好色家のクモとハエが奏でる魅惑のスウィング


『トーカートゥーン』第7作、1930年代を通してスタジオの中心人物となるウィラード・ボウスキーがシリーズ中初めて作画としてクレジットされた作品である。他に初期作品を牽引したテッド・シアーズ、ノンクレジットだがグリム・ナトウィックも参加している。

なかなか食べ物にありつけず途方に暮れるクモ夫婦。やっとハエが巣にかかったと思ったら、かかったハエは色気むんむんのフラッパーガール。クモ旦那は名曲『Some of these days』に乗せて女ハエを誘惑するが、余りのふしだらさに堪忍袋の緒が切れた女将さんが旦那をフライパンで一撃するのだった。
まさにヘイズ規制の施行前だからこそ実現できたエロ・グロ・ナンセンス。当時観ていた大人達は爆笑していたに違いない。実際、当時のキネマ旬報を読むと、当時の観客や評論家の間でもフライシャーの都会的なセンスが大ウケしていたという事がよくわかるのだ。(この辺りについては「ベティ・ブープ伝」第4章が詳しい)

もちろんストーリー設定もナンセンスでオカしいのだが、それ以上にアニメーションや音楽が面白い。
前作『Hot Dog』『Fire Bugs』で開花した「アニメーションから漂うスウィング感」がさらに発展し、常にキャラクターがリズムに合わせて動く独特のスタイルが確立している。特に後半の『Some of these days』をバックにクモとハエ、そして様々な動物が繰り広げるダンスがとても愉しい。
最も早い段階(1924年)からアニメーションと音楽の融合を試みていたスタジオだからこそ実現した、観ているとこちらまで体を揺すってしまいたくなりそうな躍動感。アニメにスウィングの楽しさを求めるのならば、この時期のフライシャー作品を観ておけば外れはない。




(劇中で使用された「Some of these days」の録音)

2018年4月30日月曜日

The Ugly Duckling(みにくいあひるの子)(1931年版)

監督:ウィルフレッド・ジャクソン
公開日:1931年12月16日
評価点:★8

観客の感情に訴えかける、ストーリーアニメの原点


シリー・シンフォニー第25作であるこの短編は、それまでの同シリーズが持っていた楽しい歌や踊り、美しい情景といった要素が薄くなった代わりに、一貫した強いストーリー性と豊かな抒情性を手に入れた作品である。
原作はよく知られたアンデルセン童話の『みにくいあひるの子』だが、本作品ではそのストーリーを大胆にアレンジし、鶏の下に生まれたアヒルの悲しみや勇敢な行動、最後に掴む幸せをペーソス溢れる表現で描き切った。なお8年後にリメイク版が製作されているが、そちらはアンデルセン童話をほぼ忠実に、より抒情的に翻案している。

この作品の肝は、ストーリーテリングと心理描写の巧みさであろう。
それまでのシリー・シンフォニーは作画レベルこそ一定の質を保ってはいたが、音楽アニメとしての側面が強くストーリーの一貫性、キャラクター描写などに関しては弱いと言わざるを得なかった。観客の感情を揺さぶる、センチメンタルな短編はまだ現れていなかったのである。
ところがこの作品は、それに成功した。一貫したストーリーを持ち、孤独に悲しみ勇気に燃えるアヒルの心情を巧みに表現することに成功したのだ。
鶏のお母さんだけではなく牛、犬、蛙にまで除け者扱いされたアヒルは木に寄りかかって嘆き悲しむのだが、この描写がえげつなく上手い。孤独に悲しむ彼の悲哀が、風に吹かれる落ち葉や物悲しげな音楽で実に見事に表現されている。また、ヒヨコを助けたことで最後にはアヒルが鶏のお母さんに家族と認められるという結末も、ディズニーらしい前向きさがあって好ましい。
作画もかなり高水準であり、竜巻のシーンは現在でも思わず息を呑んでしまう程の迫力がある。リメイク版の抒情性や画の美しさに比べるとどうしても見劣りはしてしまうが、現在でも語り継がれるべき暖かい名作と言えるだろう。

The Ugly Duckling(1925)
なお、この『鶏に育てられたアヒル』バージョンの『みにくいあひるの子』だが、実はこの作品に先駆けること6年前に既にアニメ化されている。ポール・テリーによる「Aesop's Fables」の『The Ugly Duckling』(1925)がそれである。
プロットこそ共通点が多いものの、作品の持つ説得力ではディズニーの圧勝だろう。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

2018年4月27日金曜日

Mysterious Mose(ベティの恐怖の夜)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年12月29日
評価:★8

怪奇的なギャグが冴える傑作


『トーカートゥーン』第14作であり、ベティ・ブープが登場する三番目の作品である。今作に登場するベティは、少し色黒ではあるが前二作よりも少しお馴染みのデザインに近い姿でのお目見えとなる。
Barnacle Bill』や『Swing You Sinners!』と同じくポピュラー・ソングを作品の主題とした作品であり、前二作と同じくかなりの傑作に仕上がっている。やはりフライシャー製カートゥーンとジャズは、切り離すことのできない至高の組み合わせなのだろう。

更に今作は、前半部分がベティの初めてのソロシーンとなっている。『ミステリアス・モーゼ』を時折お色気ギャグを挟みながら、クネクネと歩きながら歌うベティの姿が実に愛らしく色っぽい。
ベティが物憂げに歌っている間に、謎の奇妙な影が彼女の家に侵入する。例によって影の正体はビン坊、ブルース『セント・ ジェームス病院』を口ずさみながら変幻自在に動き回る。この辺りのシークエンスも良い意味で荒唐無稽、テンポも良くて実に楽しい。この作品のビン坊は決まった姿を持っておらず、液体状になったり透明になったりと様々に変化するのだ。
ビン坊に心を奪われるベティだったが、再び曲が『ミステリアス・モーゼ』に変わりビン坊はさらにメタモルフォーゼを次々に展開していく。巨大なトロンボーンを吹き始めたかと思えば終いには爆発してしまい、機械の部品となってバラバラになる。

あらすじなんてこういうタイプのカートゥーンには必要ないのかもしれない。何はともあれこの作品は、色気づいてきたベティやハチャメチャに動くビン坊の愉快なアニメーションを愉しむ一点に尽きるだろう。作画はウィラード・ボウスキーとテッド・シアーズだが、グリム・ナトウィックも一部のシーンに関わっているとの事。30年代のフライシャーはどちらかというとパキッとした作画が特徴のスタジオなのだが、1930年の時点ではまだその傾向はあまり見られず、荒々しい伸び伸びとした動きが楽しめる。

2018年4月16日月曜日

Barnacle Bill(脱線水兵エロ行脚)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年8月31日
評価:★8

伝統的なフォーク・ソングをフライシャー流にアニメ化


『Talkartoon』第9作となるこの作品では、前作『Dizzy Dishes』でスクリーンデビューしたベティ・ブープが再び登場する。前作ではのっぽな料理人を演じたビン坊だが、今回は少し背が縮んだデザインとなり、女たらしの水兵を演じる。

えげつない邦題が付けられた本作品であるが、原題はアメリカのドリンキング・ソング『船乗りバーナクル・ビル』(Barnacle Bill the Sailor)から取られている。物語はその小唄の歌詞をモチーフに展開していく…のだが、流石はフライシャー、なんともエロチックでシュールな短編に仕上がっており、今観ても爆笑必至のフライシャー・ワールドを堪能できる。

荒くれ者の船長を上手くやり込めて陸に上がった船乗りビル(ビン坊)は、アパートに住むナンシー・リー(ベティ)に会いに行く。物語や台詞回しは歌に沿って展開していき、ナンシーとビルのシュールなやり取りがしばらく続く。
この作品に登場するベティも、髪型こそ違えど前作と同様まだ犬としての特徴がかなり強く残っており、現在の彼女の姿に慣れた我々には少々どぎつく映ってしまうデザインである。
ナンシーとビルは、歌を歌い合いながらロマンスを繰り広げる…のだったが、なんとビルは大変な女たらしだった。実はナンシー以外にも何人もの女性と付き合いを持っており、行く港の先々で恋人を作っているというのだ。(この作品に『エロ行脚』という邦題が付けられる所以だろう)
だがもうすっかりビルに惚れてしまったナンシーは「帰らないで、また来て」と別れを惜しむのだが、ビルは「俺は船乗り、もう来ることはないさ。あばよ」などと歌いながらアパートを後にする。
ところがこの一連の様子を実は船長が見ていたのだから大変だ。突然雨が降り出し、嵐の中怒る船長、逃げるビル。終いにはビルは海へと真っ逆さまに落ちてしまい、いい気味だと船長は笑うのだったが…
なんと海の底はグラマーな人魚たちが真っ裸で踊りまくる楽園だった。ビルはもちろん大喜び。ノリに乗って踊るビルと人魚を映して物語は終わる。

…この作品、何回観ても爆笑してしまうんだよなあ。作品の元となった歌自体がかなりお下品な歌ではあるのだが、それをさらに過激に、シュール極まりないエロチックな作品として描ききったフライシャーの創造力には驚嘆するばかりだ。
作画もかなりノリノリで、メロディーに合わせて変幻自在に動くキャラクターは見ていて非常に愉快。メイン作画を担当したのはルディ・ザモラとシーモア・ネイテルだが、一部のシーンをグリム・ナトウィックがヘルプで担当している。彼らのスラップスティックなアニメ―トがこの作品の肝、と言っても過言ではないだろう。
万人に受ける作品ではないとは思うが、個人的には大好きな一篇である。こういう作品を観ていると、アニメは決して子どものためだけに作られていたわけでは元々なかった事がよくわかる。

(タイトルの元ネタであり、作品内のBGMとして用いられる『Barnacle Bill the Sailor』。動画は1930年にホーギー・カーマイケルが吹き込んだバージョン)

2018年3月30日金曜日

Stratos-Fear

監督:アブ・アイワークス
公開日:1933年11月11日
評価点:★8

アイワークス・スタジオが突如放った、狂気に満ちた傑作


『ウィリー・ホッパー』第4作となるこの作品から、それまでは普通の少年としてデザインされていた主人公のウィリーが、まるで風船のように丸々と太ったデザインに変更された。
変更されたのはデザインだけではなく、それまでのアイワークス・スタジオが持っていた些か牧歌的といえる作風まで大転換が行われた。
そう、『ウィリー・ホッパー』は後のボブ・クランペットによる『Porky in Wackyland』(1938)を彷彿とさせる、悪夢のような世界観、シュールなキャラクター造形、前衛的な劇伴音楽(奇しくも音楽担当はどちらもカール・スターリングである)を持ち味とする狂気のカートゥーンに生まれ変わったのである。
そんな狂気が持ち味となったこのシリーズの中でも、特にトチ狂った佳作と呼ぶべきなのがこの作品。

あらすじはまさに悪夢そのものだ。『Dr.A.King』という歯医者で麻酔ガスを吸いすぎてしまったウィリーは、ぷくぷくに膨らんで宇宙の彼方まですっ飛んでしまう。
奇妙な宇宙空間をさまよった挙句彼が着いたのは、逆再生語を話す謎の科学者が怪しげな動物実験を繰り返す、奇妙極まりない惑星だった。実験材料にされそうになったウィリーは慌てて逃走するが、行く先々で『Wackyland』を先取りしたようなキャラクターに邪魔される。BGMも良い感じにミステリアス、カール・スターリングの本領発揮といったところか。そんな彼は突如現れた美女に誘惑されるが、その美女の正体は先程の科学者。
ついに捕まってしまった彼だったが…実は今までの出来事は全部麻酔ガスを吸った彼が見た悪夢だった、というオチがついて物語は終わる。

この作品でアブは、セルと背景はカラーで塗り撮影は白黒で行う、という興味深い試みを行っている。その結果、作品からは従来とは異なる独特の空気感が漂うようになったという。
そんなスタジオの創意工夫のあとも垣間見る事ができる、興味深い作品だ。
(惜しむらくは現在残っているプリントの状態があまり良くない、という事だろうか…)



※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper

2018年3月3日土曜日

Betty Boop's Penthouse(ベティの屋上庭園)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1933年3月10日
評価:★8

初期フライシャーの魅力が詰まった珠玉の一篇



ジャズエイジの影響が色濃く残る初期ベティ物としては、1933年制作と比較的後期にあたる作品。この年を境に、ベティ作品からは性的な魅力やドラッギーな表現が影を潜めていき、次第に穏当な作風へと変化していく事となる。
しかし、まだこの『Betty Boop's Penthouse』ではその変化の兆候など微塵も感じる事はできない。全盛期を迎えていたベティの魅力を存分に味わう事ができるのだ。

まず作品が始まると、奇妙な建物が我々の目を引く。『ビンボーの実験室』という看板が掲げられたその怪しい建物では、何やらビンボーとココが怪しげな実験を行っていた。
この一連のギャグにおいては、初期フライシャーが得意とした『メタモルフォーゼ』が上手く活用され、なかなか魅力的なシークエンスとなっている。


彼らがふと窓を見ると、そこにいるのはお馴染みベティ。
水着を着て土いじりをするそのセクシーなアニメーションは非常に魅力的である。(こんなベティのセクシーな魅力も、あと数作もすると徐々に影を潜めてしまうのだが…)

そんなベティに見とれてしまった二人。すると彼らが放置した薬が巨大な化け物に変化してしまう。BGMもスウィンギーなジャズに変わり、ベティを襲おうとする化け物が迫力ある構図で描かれる。
異変に気付いたベティがとっさに香水を化け物に吹っ掛けと、化け物はロトスコープを用いて作画されたリアルなダンスを踊り始め、終いには乙女のような「花」になってしまう。

この作品には特別映えるギャグ、抜きんでた魅力という物は見当たらない。だが、作品から終始漂うジャジーな雰囲気、ベティのセクシーさ、フライシャーお得意の変幻自在なアニメーションはまさに模範的なフライシャー作品とも言うべき魅力を放っている。



※収録DVD:Betty Boop: The Essential Collection, Vol.1

2018年2月20日火曜日

The Country Cousin(田舎のねずみ)

監督:ウィルフレッド・ジャクソン
公開日:1936年10月31日
評価点:★8

ディズニーのシニカルな一面が光る傑作


シリー・シンフォニーの中でも中期にあたる作品であり、第9回アカデミー賞における短編アニメ賞を受賞したアニメ史に残る傑作。良く知られたイソップ寓話の『田舎のネズミと町のネズミ』をシニカルかつコミカルな視点で現代風にアレンジし、この21世紀となった現在でも充分すぎる程に楽しめる作品となっている。

あらすじはよく知られた物なので割愛するが、この作品ではその古典的なストーリーに、『白雪姫』の製作に向け格段とクオリティを向上させていったディズニーだからこそ実現できたリアルかつ愛らしいアニメーション、従来の作品とは一線を画すシニカルな視点、田舎ネズミと都会ネズミの対照的なキャラ設定を付け加える事で、寓話を素晴らしいエンターテイメント作品へと昇華させている。
印象的なシーンを述べるとすると、まずはお酒を飲んで酔っ払った田舎ネズミのコミカルなシークエンスが挙げられる。
ゼリーに映った自分に喧嘩を売るギャグや、猫の恐ろしさを全く気にせず縦横無尽に暴れまわるといった要素は、「トムとジェリー」等の1940年代におけるカートゥーンに繋がっていくと言えよう。終始紳士的かつ臆病な態度をとる都会ネズミとの対比も面白い。

また、この作品の最大の見どころともいえる迫力満点のシークエンスといえば、田舎ネズミが街の道路にうっかり出てしまったばかりに、雑踏や車や電車に踏みつぶされたり轢かれそうになったりと散々な面に遭った挙句、擬人化されたクラクションの数々に襲われるスリリングな一連のカットが挙げられよう。
遠近感がばっちり効いており、迫力満点。それでいて程よくリアリティのあるスピーディーな作画は作品に物凄い臨場感を与えている。フライシャーを思い起こさせる擬人化されたクラクションがネズミに怒鳴るシーンでは、ある種のトリップ感覚を味わう事ができる。
この一連のシークエンスについては、当時のクリエイター達にも多大な影響を与えたと思われ、後にフライシャーの「バッタ君町に行く」(1941)やハンナ=バーベラの「ジェリー街へ行く」(1945)で酷似したアングルが用いられている。

とにかくその演出やアニメーションの巧みさは、30年代後半におけるディズニーの真骨頂とも言うべきであろう。黄金期に達していたディズニーの豪華爛漫な作品群の中でも、特に愛すべき一篇である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]