2018年2月20日火曜日

The Country Cousin(田舎のねずみ)

監督:ウィルフレッド・ジャクソン
公開日:1936年10月31日
評価点:★8

ディズニーのシニカルな一面が光る傑作


シリー・シンフォニーの中でも中期にあたる作品であり、第9回アカデミー賞における短編アニメ賞を受賞したアニメ史に残る傑作。良く知られたイソップ寓話の『田舎のネズミと町のネズミ』をシニカルかつコミカルな視点で現代風にアレンジし、この21世紀となった現在でも充分すぎる程に楽しめる作品となっている。

あらすじはよく知られた物なので割愛するが、この作品ではその古典的なストーリーに、『白雪姫』の製作に向け格段とクオリティを向上させていったディズニーだからこそ実現できたリアルかつ愛らしいアニメーション、従来の作品とは一線を画すシニカルな視点、田舎ネズミと都会ネズミの対照的なキャラ設定を付け加える事で、寓話を素晴らしいエンターテイメント作品へと昇華させている。
印象的なシーンを述べるとすると、まずはお酒を飲んで酔っ払った田舎ネズミのコミカルなシークエンスが挙げられる。
ゼリーに映った自分に喧嘩を売るギャグや、猫の恐ろしさを全く気にせず縦横無尽に暴れまわるといった要素は、「トムとジェリー」等の1940年代におけるカートゥーンに繋がっていくと言えよう。終始紳士的かつ臆病な態度をとる都会ネズミとの対比も面白い。

また、この作品の最大の見どころともいえる迫力満点のシークエンスといえば、田舎ネズミが街の道路にうっかり出てしまったばかりに、雑踏や車や電車に踏みつぶされたり轢かれそうになったりと散々な面に遭った挙句、擬人化されたクラクションの数々に襲われるスリリングな一連のカットが挙げられよう。
遠近感がばっちり効いており、迫力満点。それでいて程よくリアリティのあるスピーディーな作画は作品に物凄い臨場感を与えている。フライシャーを思い起こさせる擬人化されたクラクションがネズミに怒鳴るシーンでは、ある種のトリップ感覚を味わう事ができる。
この一連のシークエンスについては、当時のクリエイター達にも多大な影響を与えたと思われ、後にフライシャーの「バッタ君町に行く」(1941)やハンナ=バーベラの「ジェリー街へ行く」(1945)で酷似したアングルが用いられている。

とにかくその演出やアニメーションの巧みさは、30年代後半におけるディズニーの真骨頂とも言うべきであろう。黄金期に達していたディズニーの豪華爛漫な作品群の中でも、特に愛すべき一篇である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

1 件のコメント:

  1. 幼稚園の頃から観てました。大好きな感じです。でも一番好きなのは『花と木』です。

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