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2019年1月7日月曜日

The Plow Boy(ミッキーの畑仕事)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1929年6月28日
評価:★5

ホーレス・ホースカラーのデビュー作


「ミッキーマウス」第8作。
本作前後から、バート・ジレットやベン・シャープスティーン、レス・クラーク、そしてウィルフレッド・ジャクソンといったアブ以外のアニメーターたちが作画に大きく関わるようになる。彼らは1930年にアブがディズニーから独立した後、スタジオの作風をより洗練されたものへと変化させていく。

農夫に扮するミッキーは、乳絞り女のミニーと出会う。ミッキーは自分の仕事はそっちのけで乳絞りを手伝うが、調子に乗ってむりやりミニーとキスしてしまったのでミニーはカンカンに怒り出す。それを見てホーレスは大笑いするが、ちょうどその時飛んできた蜂に刺されてしまったのだからさあ大変。ホーレスは痛さのあまり大暴れ、さらには切り株にぶつかった衝撃で鋤が壊れてしまった。嘆き悲しむミッキーだったが、なんとそこにはのんきに土を掘っている豚がいるではないか。大喜びするミッキーとホーレスは豚を鋤に見立てて、再び畑を耕し始めるのだった。

(図1)
この時期のミッキー作品に共通する欠点だが、本作には一貫したストーリーラインが存在しない。後半のホーレスが暴走するシーンにて次々と登場する視覚ギャグは楽しいが、基本的にはテンポも悪く音楽も貧弱で退屈な内容である。
肝心のギャグも粗野な物が多く、ディズニーの持つ田舎っぽさが悪い意味で目立ってしまった作品と言えるだろう。また背景とキャラクターの動きが反対になっているために、キャラが逆向きに歩いているように見えるシーンも存在する。(図1)
本作で特筆すべきなのは、本作が1934年頃にドナルドやグーフィーといった魅力的なキャラクターが登場するまでミッキーの名脇役として活躍したホーレス・ホースカラーのデビュー作だとされている点である。(文献やサイトによっては本作に登場する牝牛がクララベル・カウだとされている事もあるが、本作の牝牛はほとんど擬人化されていないため、ただの家畜だろうと筆者は考えている。)



収録DVD:ミッキーマウスDVDBOX vol.1

2018年11月16日金曜日

An Elephant Never Forgets

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1935年1月2日
評価:★5

ゾウは決して忘れない…?


『カラー・クラシック』第3作。
作画チーフはシーモア・ネイテルとローランド・クランドルで、どちらもフライシャー作品ではお馴染みのベテランアニメーターであり、『ベティ』『ポパイ』など数多くの作品に携わっている。

舞台はジャングルにある動物学校。楽しそうに登校する動物たちの中でもひと際目立つのが、低い声で歌いながらスキップするゾウと泥まみれになって歩くブタ、そしてカタツムリよりもゆっくり歩くカバの三匹である。ゾウが学校に着くと、さっそく彼はゴリラにいじめられてしまう。怒ったゾウは「ゾウは絶対に忘れないぞ」と呟くのだった。そんな騒動をよそに、ダチョウの先生が授業を始める。ここからこの作品のテーマ曲が始まり、歌に合わせて先生が問題を出すのだが、誰も質問に答える事ができない。
そんな生徒たちを見てゾウは「僕は絶対に忘れない」と自慢するのだが、いざ自分が当てられると何も答えることができない。みんなはゾウを指さし大笑い。
こうして授業がひと段落すると、次の時間はテストである。先生に代わってカメがテストの指示をするのだが、カンニングが行われたり教科書の投げ合いが始まったりともう教室はめちゃくちゃ。ところが先生が戻ってくると教室はすぐ静かになった。騒動に気付かない先生が帰宅の指示を出すと、動物たちは一斉に下校する。校舎の前でずっと眠っていたカバが、下校時間になったとわかるやいなや猛スピードで下校を始めるというギャグが面白い。
ゴリラとゾウもスキップしながら下校するのだが…。ゴリラがゾウの腰を蹴ると、なぜかゴリラは猛烈に痛がる。なんとゾウの腰には洗濯板が入っていたのだ。ゾウは学校でいじめられた事を決して忘れておらず、見事に復讐したというカタルシスを感じるオチで物語は終わる。

本作は2色式テクニカラーで製作されており、しかも現存するプリントの状態も決して良くないため、色彩は正直言って微妙である。それよりも、冒頭で使用されるステレオプティカル・プロセスが独自の輝きを放っている。「カラー・クラシック」の最大の魅力は、こうしたセットバック撮影をふんだんに用いていることだろう。また、サミー・ティンバーグによる快活な音楽も魅力的である。
本作はフライシャー・スタジオとしては1935年に公開された初めての作品であり、この年辺りからスタジオの作風はディズニーの影響を受けたより穏当なものに変化していく。
そうした流れは本作の欠点からも読み取れる。キャラクターデザインは従来の『フライシャー・スタイル』とでも言うべき奇妙なデザインを踏襲しているが、物語やギャグから独特のアクや毒っ気が消え、完全に子供向けな作品になってしまっているのだ。
楽しめない事はないが、少し消化不足の感がある惜しい作品である。



※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland
(上記のDVDだが、残念ながら本作にて音ズレが発生している。音質もあまり良くないため、その辺りを気にされる方は注意した方が良いかもしれない)

2018年10月22日月曜日

Betty Boop's Hallowe'en Party(ベティのキングコング退治)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1933年11月3日
評価:★5

ハロウィンパーティーでゴリラが大騒ぎ


『ベティ・ブープ』第22作。タイトルの通り、ハロウィンパーティーを舞台にしたお話である。公開日も11月3日、まさに季節ネタの作品だ。
この年の3月にかの名作映画『キングコング』が公開、大ヒットしているため、この作品もそうしたキング・コング・ブームにあやかった作品だろうと筒井康隆氏は『ベティ・ブープ伝』で推測しているのだが、それにしてはコング役に相当するゴリラが小さすぎるような気がしないでもない。邦題は言うまでもなく露骨にキングコングにあやかったタイトルなのだが…。

ある寒い夜、ベティからハロウィン・パーティーの招待状を受け取ったかかしがベティの家を訪れる。かかしとベティはパーティーの準備で大忙し。準備が終わり戸を開けると、動物たちが窓から入ってくる。ベティが「Let's All Sing Like the Birdies Sing」という童謡(?)を歌い終わると、楽しいハロウィン・パーティーの幕開けである。
動物たちがパーティーを楽しんでいるその時、キングコングを彷彿とさせる悪漢ゴリラがパーティーに乱入してくる。ゴリラはベティを捕まえようとするが、ベティが電気を消すと途端にオバケや壁に描かれた魔女がゴリラを襲い始める。
ゴリラはあまりの恐ろしさにベティの家から逃げ出し、ベティはオバケと一緒に「ププッピドゥ」を唱えるのだった。

パーティーが始まるまでの前半部分はなかなかナンセンスで面白いのだが、パーティーが始まってからの後半部分はやけに幼稚なギャグが目立ち失速してしまうのが惜しい。作画もあまり良いとはいえない。
せっかくハロウィンが作品の主題なので、ホラー演出やオバケネタと相性がいい「ベティ・ブープ」なら工夫次第ではもっと良い作品になれたのではないだろうか。作画チーフの一人であるウィラード・ボウスキーはあの怪奇カートゥーンの傑作『お化オン・パレード(Swing You Sinners)』 や『ベティの家出(Minnie the Moocher)』の作画を担当した人物でもあるので、尚更そう思うのである。
物語前半で頻発するナンセンスなギャグや快調なBGMなど楽しめない事はないのだが、色々と消化不良に終わってしまった惜しい作品といえる。



※収録DVD:Betty Boop: The Essential Collection, Vol.1

2018年10月10日水曜日

九尾の狐と飛丸

監督:八木晋一(架空の名前であり、実際の監督に該当する仕事は構成の鈴木英夫と作画監督の杉山卓が担当したらしい)
公開日:1968年10月19日
評価:★5

幻のアニメ会社・日本動画が製作した幻の長編アニメ

後に文部大臣となる大映出身の映画プロデューサー、中島源太郎が1963年に設立したアニメ製作会社『日本動画』。アニメ製作会社としては比較的マイナーなこの会社が製作し、大映によって配給された幻のカラー長編アニメ作品が、この『九尾の狐と飛丸』である。
そもそもこの会社自体、中島氏が『玉藻の前』(本作品の原作)をアニメ化するために設立したというのだから、なかなか異色な経歴を持つ会社といえる。
現在に至るまで一切メディア化されておらず、視聴困難な幻の作品となってしまったこの作品だが、東京都立多摩図書館に本作の16ミリフィルムが所蔵されており、2018年10月7日に開催された同図書館の定例映画会にて上映された。私もこの映画会にて初めて鑑賞できたのである。

雑誌『視聴覚教育』1969年12月号にて本作のあらすじと解説が掲載されているので、以下にあらすじを引用する。(余談だが、この解説文では配給が『教育映画配給社』となっている。多摩図書館に所蔵されている16ミリフィルムはこの会社が配給・販売していたものなのだろうか・・・)

平安朝の末期、都を遠く離れた下野国那須の里に少年飛丸と美しい少女玉藻の二人がいて、兄妹のように睦まじく暮していた。二人が一七才の春を迎えたとき、玉藻に金色九尾の狐の悪霊が乗り移り、日本を亡ぼす使命を負わされる。玉藻はやがて京に上り左大臣忠長の館で暮らすことになるが、飛丸もその後を慕って京に上る。美しい玉藻はたちまち京成中の評判になり、陰陽師泰[ママ]にうち勝って雨乞いの雨を降らし一層の権力を手にする。それと前後して都には妖しい事件が次々に起る。 
玉藻はやがて日本中の仏像を鋳潰して、黄金の巨像を作れという命令を出す。この魔の巨像が完成した時日本は悪魔の国となり、玉藻の使命も終るのである。しかし玉藻の命令に従わず仏像を供出しなかったために焼かれてしまった奈良の大仏の、焼け落ちた首から現われた不動明王の鉾を手にした飛丸が、その鉾を魔の巨像の胸に投げつけると、像は忽ち崩れ落ち玉藻の姿も消え失せる。魔王の命令を果たせなかった玉藻は那須に落されて醜い岩にされてしまう。

この作品が作られた経緯やスタッフの詳細についてはこちらのコラムが詳しい。当ブログでは作品そのものの感想などをダラダラと書き連ねる事にする。

まず、良い意味でも悪い意味でも非常に真面目な作品である。東映長編のようなユーモアは皆無で、ただただ玉藻の悲しい運命と飛丸の勇ましい闘いをドラマチックに描く事に徹している。
作画もあまり良くなく、特に前半は作品自体のテンポの遅さも相まってかなり退屈な仕上がりになってしまっていたのが残念。ただ、巨像に憑依した玉藻が髪を金色に輝かせながら村人たちを襲う場面に関しては、かなり迫力あるシークエンスとなっており非常に面白かった。本作では当時「放送動画制作」に所属していたと思われる倉橋孝治さん、竹内大三さん、彦根範夫さん、そして永沢詢さんといった方が作画に参加している事も特徴なのだが、もしかするとこの辺りのシーンを担当したのかもしれない。
また、水面を実写で表現したり館を歩くシーンにて疑似マルチを用いたりと、随所で工夫を凝らした演出をしていたのも興味深い。やたらリップシンクに拘っていた場面があったのも妙に印象に残ってしまった。
本作の最大の長所は、池野成氏による音楽だろうか。OPで流れるテーマ曲(?)含め、とにかく美しい作風で、正直メインであるアニメーションを圧倒してしまっていた。
スタッフ一同非常に力を入れて作っていた事は画面からもひしひしと伝わってきたのだが、技術が今ひとつ熱意に追いつかなかったために傑作には至らなかったという、非常に惜しい作品であった。

余談であるが、日本動画自体は今作と同時期に『冒険ガボテン島』の製作協力を行っている。『ガボテン島』の製作元であるTCJは本作でも製作協力としてクレジットされていたため、お互いに協力関係にあったのだろうか。
(幻のカルトアニメ「星の子ポロン」「ガンとゴン」の実制作を担当したというスタジオも「日本動画」らしいのだが、関連性は如何に…?)

2018年6月15日金曜日

Congo Jazz(混合ジャズ)

監督:ヒュー・ハーマン&ルドルフ・アイジング
公開日:1930年4月19日
評価:★5

ボスコがジャングルの動物たちと楽しくダンス


黒人少年ボスコを主人公としたシリーズ『ルーニー・テューンズ』第2作。作画はカーマン・マックスウェル、後にウォルター・ランツのスタジオに移籍し数多くの作品を監督するポール・スミスの2人である。2人はヒュー、ルドルフと同じくディズニー出身であり、『アリス・コメディ』といった初期シリーズの製作に携わっていた。
となると、この作品がサイレント期におけるディズニーそっくりの作風となるのも当然。事実この時期のボスコの動きやパーソナリティーは『オズワルド』そのものである。ストーリーラインもどことなくディズニーの『Africa Before Dark』(1928)や『Jungle Rhythm』(1929)を想起させる物となっている。

あらすじはシンプルで(この作品のメインはあくまでも音楽なのである)、狩りに来たボスコが猛獣に襲われそうになるが、音楽を奏でる事によりなんとか助かり、ラストは動物たちと一緒に軽快なジャズセッションを愉しむ、というもの。
アニメーションは良く出来ており音楽も愉快だが、ギャグや独創性、そしてキャラクターの個性に乏しく少し退屈な印象を受ける。これは同時期のルーニー・テューンズ、そしてハーマン=アイジング作品のほとんどに言える事であった。楽しいが、とにかく平凡でオリジナリティに欠けるのである。

この作品の見どころは、ラストの愉快なジャズセッションである。ディズニーとは異なり、音楽担当のフランク・マーセルズはワーナー・ブラザーズが権利を持つポピュラー音楽をBGMにふんだんに取り入れる事ができた。この作品でも、『Giving It This and That』という1930年に発表された軽快なジャズソングがラストで使用される。



※収録DVD:Looney Tunes Golden Collection Vol.6

2018年5月26日土曜日

Felix in the Swim(ピアノレッスンから抜け出せ!)

監督:オットー・メスマー
公開日:1922年7月1日
評価:★5

ネズミとフィリックスの協力作戦

ウィンクラー時代初年度である1922年の作品。第一作である『Felix Saves the Day』に比べると演出・作画の両面でトーンダウンした感が否めないが、それでもそこそこに楽しめる。この時期の水準作といったところだろうか。

フィリックスは、人情…ならぬ猫情からネズミ捕りにかかったネズミを助けてやった。フィリックスは友達のウィリーを水泳に誘うのだが、彼はピアノの練習があるから外へ出られない。そこでネズミは助けてもらったお礼にウィリーの代わりにピアノを弾き、隙を狙って2人は水泳に出かけるのだが…。というあらすじ。ヤギに服を食べられてしまう、などといったギャグも時折挟み込まれてはいるが、全体的にスピード感に乏しく少々退屈。

この小品の見どころは、中盤のネズミによるピアノ演奏にうかれてお母さんや服が踊り出すシークエンスだろう。音楽に合わせて服がひとりでに踊りだすといった擬人化ギャグは、ある意味トーキー時代を先駆けしたものともいえる。

背景デザインは線のみで構成されており非常に単調で、このスタイルは20年代を通して全く変わらない。この至ってシンプルな背景も、フィリックスというシリーズが放つ独特な雰囲気を支えていると言えるだろう。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX ( DVD2枚組 )

2018年5月7日月曜日

Feline Follies(フェリックスの初恋)

監督:オットー・メスマー
公開日:1919年9月1日
評価:★5

フィリックスのデビュー作


映画プロデューサーのパット・サリヴァンとアニメーターのオットー・メスマーによって誕生し、キャラクターとしてのパーソナリティーの強さやアニメーション技術の高さから1920年代を通じてアメリカン・カートゥーンの王者となった『フィリックス・ザ・キャット』。この作品はそんなサイレント期を代表するアニメシリーズの記念すべき第一作である。
とはいえ、パラマウント・マガジンの1コーナーとして公開されたこの作品ではまだ後にフィリックスとなる黒猫には『フィリックス』という名前は付けられておらず、『トム』という名前で登場する。

シリーズ後期の作品とは作風が少し異なっており、いかにも1910年代の『Animated Cartoon』といった趣である。背景デザインは線のみで構成されたシンプルなもので、アニメーションの動きは少しぎこちなく、キャラクターは表情に乏しい。
何より、フィリックス(トム)のデザインはこの時点ではリアルな黒猫であり、キャラクターとしての個性、つまりパーソナリティーを持つまでには至っていない。これは特定の主人公を持つアニメーションとしてはかなりの痛手と言えるだろう。(同時期のブレイ・スタジオの作品群も同じような欠点を持っていた)
フィリックスにデザインや性格上の個性が目立ち始めるのは、ビル・ノランがメスマーのアシスタントとして頭角を現し始める1924年頃からである。

まだ「フィリックス」として完成していない作品とはいえ、この作品もそれなりに楽しめる。白猫に恋をしたトムは何度も彼女に会いに行くが、トムが出かけている間に彼が飼われている家ではネズミが大暴れ。家を追い出されたトムは途方に暮れるが、白猫との間にたくさんの子供が生まれてしまった事を知り、絶望したトムはガス自殺を図ろうとする(!!)のだった。
シンプルなストーリー仕立てにはなっているが、ブラックなオチが光る一編である。また、しっぽが疑問符になるという体を使ったフィリックスらしいギャグも用いられており、後の発展を考える上で興味深い。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX ( DVD2枚組 )

2018年4月20日金曜日

Sinkin' in the Bathtub(浮世風呂)

監督:ヒュー・ハーマン&ルドルフ・アイジング
公開日:1930年4月19日
評価:★5

伝説は、浴槽から始まった


1940年代から50年代にかけてアメリカン・カートゥーンの黄金時代を第一線で牽引し、アニメ史に残る数々の傑作を残した伝説の短編アニメシリーズ『ルーニー・テューンズ』。この作品は、そんな『ルーニー・テューンズ』の記念すべき第一作である。(正確には1929年にパイロット版である『Bosko, the Talk-Ink Kid』が製作されている)
当時ディズニーのヘッドアニメーターとして活躍していたヒュー・ハーマンとルドルフ・アイジング、そしてその門下であるイサドール・フレレング(後のフリッツ・フレレング)、カーマン・マックスウェルらがディズニーから独立、一年ほどウィンクラー・プロダクションで働いた後に、『ボスコ』という黒人少年を主人公としてワーナーで開始した新シリーズがこの『ルーニー・テューンズ』なのだ。
製作のメインとなるスタッフはディズニー出身者が中心であり、その上彼らが目指していた目標もディズニーと同じ成功を掴むという事だった。…となると作風がディズニーに限りなく近くなってしまうのは至極当然の事であり、それは明らかに『シリ―・シンフォニー』を意識したであろうシリーズタイトル『ルーニー・テューンズ』にもしっかりと現れている。

物語はかの『蒸気船ウィリー』と同じく、主人公ボスコが口笛を吹くシーンから始まる。浴槽の中で上機嫌にボスコが吹く口笛のメロディーはワーナー映画『The Show of Shows』の挿入歌である『Singin' in the Bathtub』。そう、『ルーニー・テューンズ』は元々ワーナーが製作したトーキー映画の宣伝の役割も兼ねて開始されたのだった。
風呂から上がったボスコは、ガールフレンドのハニーを連れてドライブに出かける。ところが道中で様々なトラブルに見舞われ…というあらすじ。至って平凡。
フレレングによるアニメーションは流石に良くできており、ボスコ達が崖から落ちるシーンでは優れたカメラアングルが目を引く。(ディズニー時代に制作された「Bright Lights」(1928)から使い回したアイデアではあるが…)
ところがこの作品、残念なことに少し退屈なのだ。目を見張るようなギャグも皆無、テンポも悪ければストーリーも平坦。長所を挙げるとすれば先述した優れたアニメーションと愉快な音楽、といったところだろうか。
ともかく、後にアメリカン・カートゥーンの歴史を塗り替える伝説のシリーズは、この作品から始まったのだ。

2018年4月17日火曜日

The Busy Beavers(カワウソ物語)

監督:バート・ジレット
公開日:1931年6月22日
評価点:★5

小さなビーバーが住処を守ろうと大奮闘


シリ―・シンフォニー第19作となるこの作品は、同年の『Birds of a Feather』と同じく自然の生き物にスポットを当てた短編である。面白さという点では正直首を傾げたくなる作品ではあるが、堅実な作画やフランク・チャーチルの牧歌的な音楽が、いかにも30年代初期のディズニーらしい雰囲気を醸し出しており悪くはない。

邦題は『カワウソ物語』とあるが、この作品に登場するのはカワウソではなくビーバーである。ビーバーは川にダムを作るという生態はよく知られているが、本作品もそんなビーバーの珍しい生態にスポットを当てた物語となっている。
ダムづくりに勤しむビーバーたち。音楽に合わせて木を切り倒したり、小枝を川に運んだりと大忙しの彼らだが、そんな時、突然大洪水がやってくる。ダムがあるから一安心…かと思いきや、作りが甘かったのかダムは今にも決壊しそうだ。このままでは住処が危ない!ある一匹の勇敢なビーバーが、大きな木を一人で切り倒した。川はせき止められ、喜び踊るビーバーたち。勇気あるビーバーを皆でたたえるのだった。

刺激的なギャグやスピード感はこの作品には存在しない。かといって後の『The Old Mill』(1937)のような写実主義に徹しているわけでもなく、数ある『シリー・シンフォニー』の中でも少し中途半端な印象を受けてしまう短編である。
だが、流石はディズニーというべきか、洪水シーンでは目を見張るような背景動画が登場する。この美しい背景動画がこの作品のハイライトと言っても良いだろう。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

2018年2月15日木曜日

おんぶおばけ(16ミリフィルム版)

監督:横山隆一
公開年:1955年
評価点:★5

素朴かつ抒情的。伝説のおとぎプロ第一作


2018年2月4日に『発掘された映画たち2018』にて上映された幻のアニメ映画。カラーで制作された23分の中篇である。
この作品は、後に『ひょうたんすずめ』『おとぎマンガカレンダー』『五万匹』等数々の実験アニメを制作する事となり、日本アニメ界の重鎮である山本暎一氏や鈴木伸一氏らを輩出した『おとぎプロ』の第一作である。後にTCJ(現在のエイケン)により72年にテレビアニメ化されるが、こちらには「むかしばなし制作」を除いておとぎプロは関わっていない様子。(横山氏は原作・監修としてクレジット)

一見素朴に見えて実はモダンでハイセンス、かつシニカルな作風を得意とするおとぎプロだが、第一作であるこの作品では『素朴』な雰囲気がかなり押し出された作風となっている。後の『まんが日本昔ばなし』にも通じる抒情的で手作り感の溢れる作品だった…という表現が適しているだろうか。
またフジ・イーストマン・アンスコと三種類のカラーフィルムをシーン別にミックスして制作されていた事で、シーン毎に色合いがかなり変わっていたのもなかなか興味深かった。

フィルムの状態は残念ながら決して良好とは言い難く、修復が望まれる。機会があればまた見返したい作品である。
(『発掘された映画たち2018』にて上映)

2018年2月12日月曜日

Birds of a Feather(共同作戦異常なし)

監督:バート・ジレット
公開日:1931年1月23日
評価点:★5

みんなでやれば怖くない、小鳥軍団が鷹に戦いを挑む


シリー・シンフォニー第16作。タイトルはアメリカの慣用句『Bird of a feather』から採られているが、本編はというと何の事はない、ディズニー作品で何度となく用いられてきた勧善懲悪ものである。
ある湖の近く、小鳥たちは平和に暮らしていた。フクロウは歌い鶏は子どもを育てる。そんな平穏な日常が続くかと思いきや、突如彼らを狙う大きな鷹が現れた。彼はヒヨコを誘拐し、自分のエサにしようとしたのだ。そこで怒った小鳥たち。彼らは軍団を組み、集団で鷹に襲い掛かる。あえなく敗北した鷹は、真っ逆さまに地面へと落ちていく。こうして無事にお母さんの元に帰ってこれたヒヨコとその仲間たち。お母さんは息子をしっかりと抱きしめるのだった。

ストーリーはきちんと筋が通っているが、これといって面白みがある訳ではなく至って平凡。作画・演出面から見てもまさに判で押したような30年代初期のディズニー作品である。
だが、冒頭のフクロウや小鳥たちによる歌のシーンは見ていて楽しく、ディズニーならではの牧歌的な雰囲気を味わう事ができる。また、小鳥軍団が鷹を襲うシーンもなかなか迫力がありこちらも結構楽しめる。
特別惹きつけられる何かがある、という訳ではないが、7分の間幸せなひと時を過ごす事ができるディズニーらしい佳作である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

2018年2月8日木曜日

Koko in Toyland

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1925年1月20日
評価:★5

おもちゃの国を舞台に繰り広げられるドタバタ劇


初期フライシャーの主力シリーズ『インク壺の外へ』では中期にあたる作品。
自分もおもちゃが欲しいと駄々をこねる道化師ココに、マックスおじさんは様々なおもちゃを描いてやる。
喜ぶココだが、勝手に動き始めた泥棒人形がお嬢様人形を誘拐してしまう。ココはお嬢様人形を助けてやろうと木馬でひとっとび…のはずがしょせん木馬、びくとも動かない。
仕方なくココは自力でお嬢様を救出する。だがお嬢様も人形、抱き着いた瞬間バラバラに。
怒ったココは現実世界へと飛び出し、おもちゃを好き放題に動かすのであった。

作品のストーリー構成は平凡、オチも『現実と漫画の融合』という同時期のインク壺作品でよく用いられた物であり、特徴的な面はあまり見当たらない。
だがおもちゃの奇妙なデザインや作品内で何度も登場するその奇抜な発想からは、初期のフライシャーが持っていた独創的な一面がしっかり伺える。
またこの時期の『インク壺』シリーズは1950年代にテレビ・家庭用の16ミリフィルムとして再販売されており、その際に新たに追加されたウィンストン・シャープルズによる軽快なサウンドトラックも作品の魅力を一層高めている。

※収録DVD:Cartoon Rarities of the 1920s

2018年2月6日火曜日

小人の電話

監督:薮下泰司
公開日:1953年4月17日
評価点:★5


日動が制作した幻のPR映画

2017年11月26日に『神戸発掘映画祭』にて上映された後、18年2月4日に『発掘された映画たち2018』にて改めて上映された実写併用のPRアニメ作品。26分ものの中篇である。
この作品は、まず53年当時としては異例のカラーフィルムでの制作となっている。(用いられたプロセスはフジカラー・ニュータイプとの事)
また、後に東映動画の源流となる日動映画がアニメ制作を担当し、作画には若き日の古沢日出夫や森康二、音楽はクラシック界の重鎮である服部正がそれぞれ担当していたという豪華っぷり。電電公社がスポンサーを担当した、電話のマナーを説くPR映画である。


《内容解説》
ある小人の国に電話が流れつく。これを小人の国の大臣達が研究し、いよいよ電話が完成する。王様は大変喜び、自身の娘と電話大臣の息子とを結婚させるよう命じる。2人はどうやら相思相愛のようだ。
ところが、電話は一向につながらず、聞こえてくるのは雑音ばかり。電話の実験は失敗に終わったのだ。王様は激怒し、2人を無理やり引き離してしまう。電話大臣とその息子は、調査団として電話の先進国である『日本』にはるばる旅に出る事になった。
そして実写パートが始まる。実写の女性が登場し、ミュージカル調に歌いながら電話の『三つの音』について小人達、そして観客達に説明する。
ここからの小人はフライシャーの『インク壺』のような実写合成スタイルで登場し、電話局のおじさんと共に電話の仕組み、マナーについて学習していく。
電話についてしっかり理解した小人達は、意気揚々と自身の国へ帰っていった。
一方小人の国では、愛する電話大臣の息子に会えない姫が、日に日に体調を悪くしていた。王様は姫の体調を心配し、国中に静かにするよう命じたそんな時、調査団が帰ってきたのだ。姫は大変喜び、先程までの病状が嘘のように回復する。
そしていよいよ二度目の電話実験。調査のかいあって、ついに実験は成功した。2人は電話を通じて、お互いの名前を呼び続けるのであった。

本編はこういった内容であった。おとぎ話と電話のPR要素を上手く絡め、時にはギャンブルネタ等のユーモアも交えながら大衆に電話のマナーを説く、興味深い快作という印象。
関わっていたスタッフの豪華さから、さぞ本編も豪華爛漫なのだろうと期待していたのだが、作画自体は50年代アニメにしてはいささか物足りない感じだった。動きやデッサンはぎこちなく、枚数もかなり抑えている印象を受ける。予算の関係でかなりエコノミーに作っていたのだろうか。

1950年代のPRアニメ作品を観るのはこれが二度目だが(一度目は『ガリヴァー奮闘記』)、その時代特有の空気感やクリエイターの息遣いを感じる事ができ、とても興味深い作品だった。見る機会があれば、何度となく観てみたい作品である。

2018年2月2日金曜日

Bobby Bumps' Tank

監督:アール・ハード
公開日:1917年12月30日
評価点:★5

『戦車』を扱った最も初期のアニメ

先日テレビアニメ『ガールズ・パンツァー』を視聴してまんまとその魅力にハマってしまった。まだTVシリーズ・OVAしか視聴できていないニワカではあるが、近いうちに劇場版・現在公開中の最終章と続けて見ていきたい。
それはさておき、今回はブレイ・スタジオ初期の代表作であり、セル方式を用いた最初期の商業アニメシリーズである『ボビー・バンプス』の一作についてレビューする。

ある日ボビーとその愛犬フィドが作ったのは、なんと馬で動く戦車。この戦車を使ってボビー達はおじいさんが経営する農園に侵入する。彼らは農園でやりたい放題にいたずらするが、結局戦車は壊れてしまいおじいさんにいたずらの後始末を命令されてしまう。
演出や作画は制作年代を考えると概ね及第点だが、この作品の最も注目すべき所は当時最先端だった『戦車』を作品のテーマに用いた事である。


当時は第一次世界大戦の真っ只中であり、ヨーロッパにて戦車が導入され始めたのはちょうどこの作品が製作された時期(1916~17年頃)である。つまり、この作品は『戦車』を扱った最も初期のアニメーションなのだ。
そして、この頃からアニメーションは『時代を映す鏡』としての一面を持っていた事がよくわかる重要な資料でもある。



※収録DVD:Cartoon Rarities of the 1920s

2018年2月1日木曜日

Little Orphan Willie

監督:アブ・アイワークス
公開日:1930年9月6日?
評価点:★5

孤児とフリップの楽しいやり取り

『カエルのフリップ』第二作。現在残っているプリントはモノクロだが、この作品も本来は第一作の『Fiddlesticks』と同じく二色式テクニカラーで制作されたという説がある。
過去作『Alice's orphan』(1926)や『Poor Papa』(1927)等で用いられた育児ものの一つ。

あまりにも子供が増えすぎた事に困り果てたネズミのお母さんは、ついに新しく生まれた息子『ウィリアム』を自分の元から手放してしまう。困ったコウノトリは仕方なくフリップの元にウィリアムを届けるのだが…。
正直、ストーリーやギャグのインパクトはかなり弱いと言わざるを得ない。ただただ育児に奮闘するフリップと、やんちゃ盛りのウィリアムの対比を牧歌的に描く事に終始した作品である。
だが特筆すべきシーンも存在している。
電気を消したフリップがゆっくりと扉を開けるシーン(左図)で、暗闇の中で扉から差し込んだ光を効果的に描いているのだ。
この『光と闇の対比』は後に『The Cuckoo Murder Case』(1930)で更に発展した形で使われる事になる。

2018年1月31日水曜日

Fiddlesticks

監督:アブ・アイワークス
公開日:1930年8月16日
評価点:★5

名匠が手がけた奇妙な小品


ミッキーマウスの生みの親であるアブ・アイワークスがディズニーから独立した後に初めて手がけた作品であり、約三年間続く『カエルのフリップ』シリーズの第一作。
1929年、ディズニーの体制に嫌気が差したアブは、当時音響装置『シネフォン』をディズニーに提供していたパット・パワーズと独自に契約を結び、自身のスタジオ『アイワークス・スタジオ』を立ち上げる。そのアイワークス・スタジオの記念すべき第一作である。

当時としては珍しい二色式テクニカラーで制作されており、アブ独特の美的センスを存分に楽しむ事が出来る。だが、そのアニメーション自体は滑らかではあるが凡庸、ミッキーマウスのようなキャラクターの魅力も乏しければストーリー展開も平坦。更にいくつかのギャグ、そしてデザインはディズニー時代に手掛けた作品から再利用している物もある。
後にワーナーの大黒柱となるカール・ストーリングの音楽も愉快、という訳ではないが軽快で美しく、なかなか楽しめる。

アブは天才アニメーターだったが、彼が才能を発揮できたのは旧友であり共同経営者でもあった、ウォルト・ディズニーの元で働いていたからだったのかもしれない。
とはいうものの、牧歌的でゴムのようにぬるぬると動く、少し奇妙ではあるがかわいらしい小品である。初期のディズニー作品が好きな方は、その魅力を存分に感じる事ができると思う。