2018年12月16日日曜日

All's Fair at the Fair(博覧会へ行こう)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1938年8月26日
評価:★8


奇抜なアイデアと美しい背景美術が魅力的な傑作


『カラー・クラシック』第25作。
前作『スパンキー登場(Hunky and Spunky)』は「シリ―・シンフォニー」の二番煎じ的な作品だったが、本作はフライシャー特有の都会的なセンスが遺憾なく発揮されており、文句なしに楽しい傑作となった。チーフアニメーターはマイロン・ウォルドマンとグラハム・プレイス。同時期のカラー・クラシックやベティ・ブープといったシリーズの作品を数多く担当した常連アニメーターである。

ある田舎っぽいカップルが、馬に乗って万国博覧会に訪れる。そこではインスタント・ハウスやオレンジジュースの自動販売機といった珍発明の数々が展示されており、その面白さにカップルは大喜びする。次に2人は美容室へと赴くが、なんとメイクや調髪をしてくれるのは全てロボット。田舎っぽい風貌から一変し、見違えるほど都会的で綺麗になった2人はダンス会場へと向かう。
ダンスミュージックの演奏はもちろんロボット、ダンスパートナーもロボットである。ラテンとスウィングのリズムに合わせて楽しく踊った後の2人はいよいよ会場を後にする…のかと思いきや、なんと自動車の自動販売機があるではないか。男は組み立て式のロードスターを購入し、急いで組み立てる。組み立てが完了すると、2人は車に馬を乗せて物凄いスピードで会場を後にするのだった。

かつての『ベティの発明博覧会(Betty Boop's Crazy Inventions)』や『グランピー』シリーズで発揮された奇抜な珍発明のアイデアが再びたっぷりと楽しめるのが、本作の最大の魅力である。
フライシャーはこうしたSF調の作品をサイレント時代から得意としており、後の「スーパーマン」シリーズもこうした作品群の系譜の一つと言えるだろう。事実本作では、「スーパーマン」を彷彿とさせるモダンで魅力的な美術背景が全編に亘って用いられている。
ギャグやストーリー性こそ薄く単純な科学礼賛に徹した内容ではあるが、その魅力は現在観ても全く色褪せていない。むしろ、こうした科学技術に純粋な夢を抱けなくなった現代だからこそかえって魅力的に映る、再評価されるべき傑作なのかもしれない。
残念ながら、本作以降都会的なセンスが光るモダンな作品は「カラー・クラシック」から二度と産み出されなかった。フライシャー・スタジオは、こうした傑作を生みだしつつもシリーズの作風をよりディズニー調な物へと変化させていったのである。

 

※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland