ラベル ★6 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ★6 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年10月25日木曜日

The Headless Horseman

監督:アブ・アイワークス
公開日:1934年10月1日
評価点:★6

アブ・アイワークス版『スリーピー・ホロウの伝説』


MGMとの配給契約が切れ、スタジオの親会社であるセレブリティ・プロダクション自身によって配給されたアイワークス・スタジオの「コミカラー」シリーズ。本作は1933年から1936年にかけて全25本が製作されたうちの第7作目である。
原作は、アメリカではハロウィンの時期になるとよく語られるという「スリーピー・ホロウの伝説」。ディズニーも1949年にオムニバス形式の長編アニメ「イカボードとトード氏」の1パートとしてこの物語をアニメ化しているが、本作の公開年は1934年。ディズニーに先駆けること約15年である。

のどかな村スリーピー・ホロウに住む美しい女性カトリーナ・ヴァン・タスル。大柄な若者ブロム・ボーンズと気の優しい教師イカボード・クレインの2人は彼女に恋心を寄せていた。
ある日の学校では、イカボードが「首なし騎士の伝説」という恐ろしい本を読んでいた。そんな時、彼はカトリーナからパーティーに誘われる。おめかしをしてカトリーナの家へと赴くが、そこには忌々しきライバル・ブロムの姿が。パーティーが始まると、2人はなんとかしてカトリーナの気を引かせようと様々な手をつかって彼女にアプローチするのだが、なかなか決着がつかない。そこでブロムは帰路でイカボードが怖がっていた「首なし騎士」に仮装し、彼を脅かす事にする。ブロムの企みは成功し、イカボードは一目散にどこか遠くへと逃げていった。
そうしてブロムとカトリーナの結婚式が行われたのだが…そこに現れたのは首なし騎士。ブロムもカトリーナも式場から逃げ出してしまうが、首なし騎士の正体はなんとイカボードだったのだ。

本作の最大の見どころは、アブ自身が自動車の部品で作り上げたという独自のマルチプレーン・カメラを撮影に導入している点が挙げられる。特にタイトルカードを始めとする幾つかのカットで登場する、首なし騎士が馬に乗って駆けていく動画の迫力は目を見張るものがある。イカボードの机を回り込むカットなど、他にもマルチプレーン・カメラが使用されているシーンが幾つかあり、そのどれもが抜群な効果を上げているのが素晴らしい。
ただキャラクターデザインに関しては若干粗雑な部分が目立ち、カトリーナは美女というよりもぽっちゃりとしたベティ・ブープである。イカボードは初期のフライシャー作品に登場する爺さんを彷彿とさせるデザインだ。(当時のスタジオには元々フライシャーに在籍していた作画スタッフが多数在籍していたので、仕方ない事ではあるのだが…)
アイワークス作品のご多分に漏れず、ストーリーやギャグの面でもイマイチ感は否めない。特に中盤はありきたりな演出尽くしで中だるみしてしまっているのが残念。
とはいえ個々のカットの完成度やアニメーションの出来自体は素晴らしく、玉石混合の「コミカラー」の中ではなかなか出来の良い部類に入る佳作といえるだろう。

2018年9月14日金曜日

Bold King Cole(勇敢な王様)

監督:バート・ジレット
公開日:1936年5月29日
評価:★6

ヴァン・ビューレン最後のフィリックス


ディズニー出身のアニメーター、バート・ジレットがヴァン・ビューレン・スタジオに移籍して手掛けたシリーズ『レインボー・パレード』。本作は、サイレント時代に絶大な人気を誇ったキャラクター『フィリックス』を主人公とした三部作の最終作である。
この作品が公開された後、フィリックスが主人公のアニメーション作品は1958年のテレビアニメ「とびだせフィリックス」まで製作されなくなる。フィリックスがアニメスターの座を離れている間、原作者のオットー・メスマーは一時期(1944-47年頃)かつて最大のライバルだったフライシャー・スタジオの後身であるフェイマス・スタジオで働いていたというのだから面白い。
本作の監督はバート・ジレット単独。後に彼がディズニー復帰後に監督した『ミッキーのお化け退治(Lonesome Ghosts)』(1937)を彷彿とさせる作品に仕上がっている。

木の上で楽しく歌を歌っていたフィリックスだったが、突然の嵐に見舞われお城に逃げ込む。その城の主は大ぼら吹きで臆病な王様だった。実はお城には幽霊がたくさん棲み付いており、おしゃべりで嘘つきな王様を凝らしめようと大暴れしてしまう。
フィリックスは雷を使って幽霊を撃退、喜んだ王様はフィリックスを王子にしてやるのだった。

本作も、前2作と同様にデザインや美術設定に関しては非常に洗練されており申し分ない出来である。特に嵐や幽霊といったホラー描写は良く表現できており、甘ったるい描写が目立つ「レインボー・パレード」としては出色の出来栄えといえる。
またウィンストン・シャープルズの音楽も素晴らしく、挿入歌の「Nature and Me」をはじめとするキャッチーな歌や軽快なBGMが作品の魅力を際立たせている。この作品に限らず、ヴァン・ビューレンの作品はとにかく音楽が良いのだ。
ただ、刺激的なユーモアや機知に富んだアイデアが乏しく、全体として平坦な作りになっているのが非常に残念。(これも残念なことにヴァン・ビューレン作品全体に言えることなのだが…)
前2作での最大の問題点だった「フィリックスの性格」も依然として改善しておらず、サイレント時代のブラックさは影を潜めて『勇敢な少年』になっているのも惜しい。

この作品が公開されてから5か月後の1936年10月、配給元だったRKOがディズニー作品の配給を始めた事をきっかけにヴァン・ビューレン・スタジオはアニメーション作品の製作を休止してしまう。そしてさらに2年後の1938年11月12日、ヴァン・ビューレン自身も心臓発作でその生涯を終えるのであった。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX (DVD2枚組)

2018年8月27日月曜日

The Goose That Laid the Golden Egg(フィリックスと金のガチョウ)

監督:バート・ジレット&トム・パーマー
公開日:1936年2月7日
評価:★6

テクニカラーで蘇ったフィリックス


『三匹の子ぶた』を始めとする、数々の名作を演出したディズニーの名匠バート・ジレットがヴァン・ビューレン・スタジオに移籍して手掛けたシリーズ『レインボー・パレード』。本作は、サイレント時代に絶大な人気を誇ったキャラクター『フィリックス』を主人公とした三部作の一作目。1930年以降新作が作られていなかったフィリックスだが、6年の時を経てテクニカラーで蘇ったのである。
とはいっても、オリジナル版のクリエイターであるオットー・メスマーとパット・サリヴァン(1933年没)は製作に関わっていない。本作はバート・ジレットと、彼と同じくディズニー出身であるトム・パーマーの共同監督作なのだ。

金の卵を産むガチョウと共に、貧しい人々にお金を分け与えるフィリックス。ところが海賊団の船長であるキャプテン・キッドがフィリックスの家に侵入し、ガチョウを奪ってしまったのだからさあ大変。フィリックスは大砲を使って、彼が舵を取る海賊船へと乗り込むのだった。
海賊船に到着したフィリックスは海賊との激しい戦いの末、見事勝利する。そして海賊が今まで盗んできた財宝を街の貧しい人々に分け与えたフィリックスは、英雄として祝福されるのだった。

作画は(ヴァン・ビューレンスタジオの作品にしては)良好であり、演出やデザインの面でも以前の作品より非常に洗練された印象を受ける。ウィンストン・シャープルズによる音楽も良い。1936年という公開時期、そして予算やヒット作に恵まれなかったスタジオの性質を考えると、出色の作品と言えるだろう。
ただこの作品―これは他の『レインボー・パレード』にも言えることなのだが―ストーリーが甘すぎるのだ。ユーモアが少なく、あまりにも王道すぎるのである。
フィリックスはサイレント時代に持っていたいたずら好きで小市民的な性格を捨て、正義感溢れる勇敢な少年に変貌してしまった。ミッキーマウスを演出したバート・ジレットが監督したのだから、ある意味当然なのかもしれないが…。
唯一楽しめるギャグは、フィリックスが自分を砲丸に見立て、大砲を使って海賊船へ飛んでいくというネタだろうか。アニメーション史研究家のレナード・マルティン氏も、このシーンを称賛している。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX (DVD2枚組)

2018年7月14日土曜日

Oh Teacher(オー、ティーチャー)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1927年9月19日
評価:★6

オルテンシアを巡って猫とオズワルドが正面(?)対決


1927年から28年にかけてユニバーサルスタジオ・ウィンクラープロダクションにより配給され、ディズニーのアニメーションスタジオとしての地位を確固たるものにした幻のシリーズ『しあわせうさぎのオズワルド』。本作品はシリーズ第3作である。
このシリーズはオリジナルのネガが失われており、この作品も1932年にウォルター・ランツの手で再編集された再公開用のプリントしか現存していない。その際に幾つかのシーンが散逸したとの事であり、ぜひともオリジナル版のプリントが発掘されてほしいものである。
作画はヒュー・ハーマン、ローリン・ハミルトン、そしてフリッツ・フレレング。三人とも後にワーナーへ移籍し、特にフリッツはスタジオの大黒柱として数々の名作を手掛ける事となる。(ヒューは同じくディズニー組のルドルフ・アイジングと共に初期ワーナー作品の立役者となり、後にMGMに移籍する)

オズワルドは自転車に乗って、彼女と一緒に学校に行こうとする。ところがそれを邪魔するのが悪ガキ猫で、オズワルドから自転車を奪ってしまう。さらに川に落ちてしまったオルテンシアをオズワルドが助けようとするのだが(「HELP」の文字が馬になるというギャグが良い)、これもまた猫によって邪魔されてしまい、彼女に嫌われてしまったオズワルドは呆然とする。
そして、休み時間。オズワルドは猫に逆襲しようとレンガを持って待ち伏せするのだが、猫にその様子がバレてしまった。猫はレンガを投げてオズワルドに戦いを挑むのだが、投げたレンガが自分に返ってきてたちまち失神。オズワルドはさも自分が倒したかのような素振りを見せ、オルテンシアはオズワルドに惚れ直すのだった。

どうも恋敵同士の対決はオズワルド…だけではなくサイレント期の喜劇映画の定番だったようで、この後もまたシリーズ中数度に亘って繰り返されるテーマである。
前作の「トロリー・トラブルズ」と比べると作画や展開に少し粗さを感じるのが惜しい本作品だが、ギャグやキャラクターの感情表現が豊富なので結構楽しめる。特にヒューが手がけた冒頭のオズワルドが花占いをするシーン、ハミルトンが手がけたオズワルドがレンガの言い訳をして猫を怒らせるシーンの二つはキャラクターの感情がよく現れており面白い。
また、オズワルドの首が取れたり「HELP」の文字が馬になるといったサイレント期ならではのギャグも散見されるのが興味深い。



収録DVD:オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット 限定保存版

2018年6月23日土曜日

Little Dutch Mill(丘の風車小屋)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1934年10月26日
評価:★6

オランダの風車小屋にまつわる、ある騒動を描く


フライシャー・スタジオがディズニーの「シリー・シンフォニー」に対抗して1934年に開始したシリーズ『カラー・クラシック』の第二作。当時ディズニーが三色式テクニカラーを独占していたため、独占契約が切れた1936年度までの作品は発色が劣る二色式テクニカラーで撮影されており、この作品もその中の一作である。(第一作の『ベティのシンデレラ(Poor Cinderella)』のみシネカラー)
作画は30年代の同スタジオを代表する作画スタッフのウィラード・ボウスキーと、後に多くのカラー・クラシックの作画を担当するデヴィッド・テンドラー。汚い身なりをした風車の持ち主の、荒々しい動きが見もの。

舞台はオランダの平和な村。ある2人の少年少女と可愛いアヒルが、丘の上にある風車小屋の周りで楽しく遊んでいた。ところがその風車小屋の持ち主は、ずるをしては金を稼ぐ事を生きがいとする汚い身なりをした男。男がお金を小屋の中に貯め込んでいるのを発見した2人は、男に捕まってしまう。アヒルは慌てて村の大人たちを呼び、男は無事に捕まった。村の人々は男の身なりをきれいにし、小屋の中も隅々まで掃除した。
するとどうだろう。あんなに下品だった男の身なりはすっかり綺麗になり、あんなに汚かった小屋の中も美しく蘇った。男は村の人々に感謝し、貯めこんでいたお金をみんなに分け与えるのだった。

本作では立体模型を用いたセットバック撮影がふんだんに取り入れられており、フライシャー独特の迫力を生み出しているのが素晴らしい。優れた音楽や背景美術もオランダの牧歌的な雰囲気をうまく演出しており、なかなか好印象な作品である。同じく『風車小屋』を作品の主題としたディズニーの『風車小屋のシンフォニー(The Old Mill)』(1937)と対比するのも一興だろう。
ただ、―これは『カラー・クラシック』短編のほぼ全てに言える事なのだが―作品内にユーモアが欠如しておりあまり楽しくないのが残念。1934年以降、フライシャー・スタジオはディズニーの影響を受けて徐々に作風が変化していき、初期にあったシュールな魅力が少しずつ失われていくのである。



※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland

2018年6月1日金曜日

The Bum Bandit(ビン坊の列車強盗)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1931年4月3日
評価:★6

ビン坊がベティ扮する謎の女と対決


『トーカートゥーン』第19作、ベティ・ブープが登場する4番目の作品。作画はフライシャー・スタジオの大黒柱的な存在であるウィラード・ボウスキーと、オット・メスマーのスタジオ出身であり後にフェイマス・スタジオでも活躍するアル・ユーグスター。お馴染みの面々である。

指名手配犯の悪漢ビン坊が列車強盗を企むが、謎の女に作戦を邪魔される。『危険なナン・マグルー』と名乗る彼女は実はビン坊の妻だった。ビン坊は彼女の腕っぷしに敵わず、コテンパンにやられてしまう。ナンはビン坊を尻に敷き、列車を乗っ取ってはるか遠くへと旅するのだった。
相変わらず愉快ではあるのだが、フライシャーお得意のシュールなギャグが少なく、傑作・問題作揃いの『トーカートゥーン』シリーズの中では少し平凡な印象を受ける。
とはいえ『銃』が煙草を嗜んだり、『右に』銃を撃ったのに『空から』牛が落ちてくるといった優れたギャグも幾つかあり、相応に楽しめる作品ではある。機関車がゴム紐のように動く、といった暴走気味のアニメーションは流石はフライシャーと言うべきか。

この作品で何より目を引くのはヒロインであるナンシー・マグルー、つまりベティの声である。
ベティ・ブープの声と言えば一般的にヘレン・ケイン風の甲高い声が定着しているが、今回のベティはあの声とは全く異なる、普通の成人女性の声で登場する。これはこれで色気があって悪くないのだが、流石にキャラクターのイメージと合致しなかったからかこのボイスのベティはこの作品一回きりの登場となっている。

2018年5月30日水曜日

Robin Hood, Jr.

監督:アブ・アイワークス
公開日:1934年3月10日
評価点:★6

ロビンフッドに扮したウィリーが大活躍


『カエルのフリップ』に次ぎアイワークス・スタジオが製作した『ウィリー・ホッパー』第七作。本作も前作『Hell's Fire』と同様本来は二色式シネカラーで制作されていたようだが、残念ながら現存するフィルムはモノクロのみ。しかしそれがかえってモノクロの階調に深みをもたらしているのが面白い。

邪悪なジョン王子と結婚する事となったメイド・マリオン(顔立ちはベティによく似ている)。楽しく歌を歌っていたウィリー扮するロビン・フッドに助けを求め、ロビンは道化師に扮して城に侵入。王子やその家来と熾烈な戦いを繰り広げ、最後は機転を利かせて大勝利。二人はキューピッド(こちらもベティ風の顔立ち…)によって見事結ばれるのだった。


さて、本作でも相変わらず主人公のウィリーは丸々としたデザインこそ漫画的で愉快だが個性に乏しい。同じくヒロインもベティ・ブープの亜流といった趣である。
だが、一貫したストーリー性を持ち、美しい背景と豊富なユーモアがふんだんに使われているのでそこそこ楽しめる佳作に仕上がっている。フライシャー的だが独特のスマートな魅力を併せ持つ作画スタイルは今作でも健在、後にワーナーに移籍し『ルー二ー=テューンズ』で活躍するカール・ストーリングの音楽もコミカルで楽しい。

作画は元フライシャー在籍組であり、後にディズニーに移籍するグリム・ナトウィック。この時期(1933ー34年頃)のスタジオにはナトウィックの他にシェーマス・カルヘイン、アル・ユーグスター、バーナード・ウルフといった面々がフライシャーからの移籍という形で在籍していた。後期アイワークス作品がデザインやギャグの面でどことなくフライシャー「っぽい」のは、主要スタッフにフライシャー組が多かった事も関係しているのではないだろうか。

※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper

2018年5月13日日曜日

Just Dogs(ワンちゃん放浪記)

監督:バート・ジレット
公開日:1932年7月30日
評価点:★6

犬たちの生き生きとした描写が楽しい一作


シリー・シンフォニー第30作であり、従来は『ミッキーマウス』シリーズの脇役として登場していたプルートが主演を務めた初の作品である。
『三匹の子ぶた』『花と木』をはじめとする数多くの初期ディズニー作品を演出したバート・ジレットが今作でも監督を務めており、際立ったユーモアや格別な美しさなどは目立たないものの堅実で素直に楽しめる作品となっている。

野犬の収容所に入れられたプルートと子犬。なんとかプルートを喜ばせたい子犬は檻をこじ開け、他の犬たちにも頼まれ檻を全て開放する。子犬のおかげで脱走できたプルートだったが、なぜか子犬には冷たく接したまま。
それなら、と子犬はプルートに骨をプレゼント。喜ぶプルートだったが相変わらず子犬には冷たいままである。そんな時、二匹が骨を持っている事に気付いた他の犬たちが怒って一斉に二匹に襲い掛かる。子犬は機転を利かせて犬たちにノミをぶっかけ、見事に骨を守る。ようやくプルートは子犬と仲良く接するのだった。

1931年以降の『シリー・シンフォニー』は音楽的な要素が薄くストーリー性を重んじた作品も少しずつ増えてきており、この作品もその一つである。作画のクオリティも最初期に比べるとかなり向上しており、犬たちの生き生きとした描写が楽しい。特に冒頭の収容所に収監されている犬たちの描写はそれまでとは一線を画すリアルさがあり、目を見張るものがある。
欲深く意地悪なプルート、純粋にプルートの事が大好きな子犬、二匹間で性格がまるで異なり、それぞれしっかりとした個性を持っている点も興味深い。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

2018年4月25日水曜日

Davy Jones' Locker

監督:アブ・アイワークス
公開日:1933年12月9日
評価点:★6

ウィリーが海底の沈没船で大冒険

『ウィリー・ホッパー』第5作。このシリーズは基本的にモノクロで撮影されたのだが、この作品と『Hell's Fire』の2作品のみ『シネカラー』という二色式のカラープロセスで撮影されている。幸い状態の良いネガが現存しており、今でもシネカラー特有の鮮やかな色彩が楽しめるのだ。

さて、この作品では冒頭にMGMのレオ・ザ・ライオンを擬人化したキャラクターがウィリーを紹介するシーンから始まる。ステージの上でウィリーが話し始めた冒険譚は、なんと海が舞台。仲良く釣りをしていたウィリーとガールフレンドのマリーだったが、海の王様の王冠を釣り上げてしまった事で王様が激怒。ウィリーの船を嵐で沈没させてしまう。
このシーンの作画は迫力満点で思わず息を呑むほどの出来なのだが、実は前年の『Stormy Seas』で使用された原画の流用なのである。
こうして不幸にも海の底に落ちてしまった二人だったが、大きな沈没船に侵入し、幽霊船長や人魚たちと楽しく歌や踊りを繰り広げる。人魚の顔がどことなくベティ風で色っぽいのが面白い。
ところが酔っ払った船長がマリーにちょっかいを出し始め、怒ったウィリーは船長と一騎打ち。見事勝利したウィリーはマリーとキスを交わすのだった。

アイワークス・スタジオらしいシュールなキャラクター造形と滑らかな動き、独特の色彩設計が楽しい作品だが、やはりストーリーやギャグのインパクトに弱さを感じてしまうのが惜しい。



※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper

2018年4月22日日曜日

Toyland Adventure(原題:Toy Time)

監督:ジョン・フォスター&ハリー・ベイリー
公開日:1932年1月27日
評価点:★6
Toy Time1

二匹のネズミが織りなすおもちゃのファンタジー


ポール・テリーが1929年にヴァン・ビューレンの下を去った後、ジョン・フォスターら残留スタッフによって製作が継続された『Aesop's Fables』。ヴァン・ビューレン・スタジオは作品数こそ多かったものの、粗野なデザインや未熟な作画などが目立ち、アニメーション技術では他スタジオと比べて苦戦を強いられた。
それでも、このスタジオは確かな独自性を持っていた。それは奇抜なアイデアと、ジーン・ロデミックによる抜群に楽しい劇伴音楽である。ジャズやポピュラーソングをふんだんに取り入れた軽快な音楽はスタジオの作風と実にマッチし、時には30年代前半のカートゥーン中最高ともいえる効果を発揮する事もあった。
Toy Time2この作品はそんなジーン・ロデミックの劇伴が最高の効果を発揮した作品の一つである。

主人公はどことなく有名なネズミを想起させるネズミのカップル。(実はこの作品以前に更に某ネズミに酷似したネズミカップルも幾つかの作品に登場していたのだが、こちらはディズニー側の提訴により使用されなくなったとの事だ)
真夜中のおもちゃ屋に忍び込んだ二人は、軽快なマーチ『Siamesische Wachtparade』に乗せて楽器を演奏したりおもちゃで遊んだりと大冒険。
ところが二人を狙う大きな黒猫が現れ大ピンチに。二人は機転を利かせてオモチャで黒猫を見事退治し、ロマンチックに『Goodnight Sweetheart』を歌うのだった。

この作品は少し『シリ―・シンフォニー』風になっており、スタジオの特長である『アイデアの奇抜さ』が薄くなってしまっているのが残念だが、ストーリーは筋がきちんと通っておりなかなか上出来である。背景美術はかなり凝っており、アニメーションも悪くない。この時期の『Aesop's Fables』としてはかなり出来の良い作品と言えるだろう。



※収録DVD:Cartoon Rarities of the 1930s

2018年4月13日金曜日

Hell's Fire

監督:アブ・アイワークス
公開日:1934年1月6日
評価点:★6

ウィリーの奇妙な地獄めぐり


『ウィリー・ホッパー』第6作。基本的にこのシリーズはモノクロで撮影されていたのだが、この作品と『Davy Jones' Locker』の2作品のみ『シネカラー』という二色式のカラープロセスで撮影されている。…というのも発色の良い三色法テクニカラーは当時ディズニーが独占契約を結んでいたため使用できなかったのだ。
とはいえ、現存するネガでは三色法に負けないほど鮮やかな色彩がしっかり残っている。
さて、この作品はシネカラーの強みである赤の発色の良さを最大限に活用した作品となっている。というのも、真っ赤に燃え盛る『地獄の炎』を作品の主題にしたのだから面白い。
そのギラギラした色使いを用いた鮮やかなビジュアルは、今でも我々に強い衝撃を与えてくれる。

…だが肝心の内容はというと、これまたアイワークス・スタジオらしくストーリーの筋は皆無に等しい。ただただ無軌道でドタバタしたギャグのオンパレードである。この作品を楽しむには、酔っ払った地獄の住人や、ウィリーが出会う奇妙な化け物たちが織りなす刺激的なビジュアルを堪能する事に尽きるのではないだろうか。
歴史上の偉人や映画作品のパロディも続々登場し、お酒や悪魔に絡んだブラックなネタも随所に挟み込まれており楽しい。アニメーションの出来も少々野暮ったいものの水準レベルは維持しており、傑作ではないが7分間しっかり楽しむ事が出来る娯楽作品と言えるだろう。
また、この作品はその世界観や内容、ストーリーの共通点から、アブがディズニー時代に監督した『Hell's Bells』(邦題:地獄の悪魔退治、1929年)のリメイク作と取る事もできる。案外彼はネタの使い回しが多い。



※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper

2018年4月8日日曜日

わんわん火事だわん

監督(演出):田口真
製作年:1981年
評価点:★6

名匠・南家こうじが手がけた火災予防PRアニメ


現在も『みんなのうた』や『おかあさんといっしょ』で活躍する、音楽アニメにおいては他の追随を許さない名匠・南家こうじ氏がキャリア初期の1981年に手掛けた火災予防PRアニメ。約18分と比較的短くまとまっており、彼独特のタッチや軽快なアニメーションを存分に楽しむ事ができる快作に仕上がっている。

火の無い星からやってきた迷子の宇宙人チャッタ君、しっぽが燃えたトラウマから火事に詳しくなった犬のブラザー、明るい少年もん太とその友達が巻き起こす騒動とそれによって育まれる友情を描きながら、火災の予防を訴える内容となっている。テーマはまさに『火の用心』だ。
南家さんとは別の人物が担当した脚本・演出は至ってオーソドックス、娯楽作品として観ると少々物足りない。だがあくまでもこの作品は『啓発もの』という事を忘れてはならない。手堅くまとまっており、こういったジャンルに属するアニメーションの中ではかなり楽しめる部類に入るのではないだろうか。OPで流れるテーマ曲と映像もノリが良く、これだけでも充分楽しい作品である。(同じく『火災防止』をテーマとした『ザ☆ファイヤーGメン』には敵わないが…)

さて、南家さんのデザイン・作画だが…こちらも彼にしてはやや穏当というべきか。PR映画という媒体だからか、作画枚数もやや抑え気味な印象。表現技法もごく普通のセルアニメである。
もちろん注目すべき部分はいくらでもあり、例えば犬のブラザーが繰り広げる軽やかなアクション(特にOPでの動き)はまさに南家節とでも言うべきリズミカルな作画となっており観ていて非常に楽しい。また、野沢雅子演じるもん太少年とその仲間たち、両親らのデザインも、後の『スプーンおばさん』や『あんみつ姫』を思わせるコミカルなデザインとなっておりなかなか秀逸。宇宙人のチャッタ君も、同時期にみんなのうたで放映された『あさおきたん』を彷彿とさせる柔らかなタッチで好印象。やはりPRアニメでも、南家アニメの魅力は健在なのだ。
また、演じている声優も、千々松幸子さんや喜劇俳優の故・由利徹さん、後にキートン山田として活躍する山田俊司さん、そして野沢雅子さんと非常に豪華な顔ぶれが揃っている。

…と、この作品、今観ても十分色褪せない魅力を持っている。初期の南家アニメという点でも資料的価値は高く、南家ファンなら一度は見ておきたい作品である。
ところがこの作品、TV放送された実績は恐らく存在せず、現在はいくつかの公共施設にVHSや16mmフィルムが所蔵されているのみであり、視聴するのはなかなか困難になっているのが残念だ。幸運な事に筆者はある施設でこのVHSを視聴する機会を得たため、幻の映像を楽しむ事ができたのだった。圧倒的感謝…!

以下、スタッフ・キャスト情報(OP・EDクレジットより)

推薦  自治省消防庁
指導  東京消防庁

企画   社団法人日本損害保険協会
製作   英映画社
製作協力 旭プロダクション

提供 社団法人日本損害保険協会

(声の出演)
ブラザー  由利 徹
チャッタ君 千々松幸子
もん太   野沢雅子
お父さん  山田俊司
お母さん  吉田理保子
ひとみ   滝沢久美子
ゆたか   峰あつこ
(ぷろだくしょんバオバブ)

製作    服部悌三郎
脚本    小山高男

キャラクター・デザイン&作画 南家こうじ
画コンテ  菊田武勝

動画 福島康生(日本サンライズ)
仕上 富田誠一
背景 小関俊之

撮影 旭プロダクション
音楽 池多孝春
効果 小川勝男
録音 中里勝範(プロセンスタジオ)
現像 東洋現像所

演出 田口 真

製作協力 山浦勇一郎(旭プロダクション)
製作担当 長井 貢

2018年4月6日金曜日

Dizzy Dishes(ビン坊の料理人)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年8月9日
評価:★6

ベティ・ブープのデビュー作


この作品は、『Talkartoons』の第8作(第7作との説もあり)として1930年に公開された。作品自体の出来は水準作というレベルなのだが、現在ではアニメ史を語る上において外す事はできない短編となっている。
というのも、この(比較的平凡というべき)短編作品は、フライシャーが生んだ世紀のアイドル『ベティ・ブープ』のスクリーンデビュー作なのだ。

ストーリーはこの時期の他のフライシャー作品と同様、ほぼ無いと言っても良い。厨房で働くビン坊が、客のクレームに振り回されたりベティの歌声に聞き惚れる、といった具合である。
グリム・ナトウィックとテッド・シアーズが担当したアニメーションも、まさに典型的なトーキー初期のフライシャー・スタイルだ。少々グロテスクで野暮ったいギャグがテンポ良く繰り広げられ、理屈抜きに楽しいグニャグニャした動きが楽しめる。

物語中盤でいよいよベティのミュージカル・シーンが始まるのだが、筒井康隆氏が『ベティ・ブープ伝』で酷評しているように、この作品に登場する彼女の姿は現在の人間らしい彼女に見慣れた人々からすればかなり気味悪く映ってしまうだろう。声こそマギー・ヘインズによるハイトーン・ボイスなのだが、ずんぐりと太ってグネグネ動く、まさに犬のようなベティなのだ。
私はこれはこれで別の魅力があると思っている性分なのだが、『人間のベティちゃんが動く様子を見たい!』という方は1931年まで待たなければならない。

肝心のオチは、食べ物を待ちきれなくなった客がついにビン坊を襲い、恐れおののいたビン坊は机を切ってこしらえた機関車で店から逃げる、という代物である。まさにナンセンス。愉快で粗削りな作品だ。
この未熟なアニメーション技術特有のシュールさが良い方向に傾き、傑作となった『Mysterious Mose』や『Swing You Sinners!』(両作品とも1930年)と異なり、この作品ではそういった魅力はあまり感じられない。だが、やはりこの作品はアニメ史に残る記念碑的短編であり、ベティ作品を愛する者としては外す事のできない作品であるという事には変わりはないのである。
なぜなら、後にアニメ史を塗り替える名キャラクター、ベティ・ブープはこの作品から生まれたのだから。



※収録DVD:Betty Boop: The Essential Collection, Vol.2

2018年3月27日火曜日

The Air Race(ウィリーの飛行機猛レース)

監督:アブ・アイワークス
製作年:1933年
評価点:★6

ユーモアに満ち溢れた佳作


『カエルのフリップ』シリーズを一旦終了させたアイワークス・スタジオが、スタジオの顔として新たに創作した、大ボラ吹きの少年『ウィリー・ホッパー』が主演するシリーズの第一作。
このシリーズは『フリップ』よりも奇妙で不条理なギャグを前面に出しているのが特徴的なのだが、主人公『ウィリー』のデザインが以降の物と異なる今作においてもその独特の魅力は存分に楽しむ事ができる。
なお、この作品は配給側のMGMが作品内容に難色を示したため実際には劇場公開されなかったという、ある意味『幻のパイロット作品』とも言うべき代物でもあるのだ。(同年、本作品のプロット、一部のアニメーションを再利用したリメイク作『Spite Flight』が製作されている)

さて、この作品は以前アイワークスがディズニー時代において製作に関わった『The Ocean Hop』(1927)のリメイク作とも取れる内容となっている。
プロットもよく似ている。どちらも単純明快、愉快な飛行機レースなのだ。最もこちらは『ウィリー』が喋る壮大な作り話だった、という一ひねりしたオチがつく訳だが…。
他にも『悪役が主人公の飛行機のタイヤにガムをつけてレースを妨害する』など、ギャグに関しても共通する部分があるのが興味深い。

作品の質自体はそこそこ楽しめる凡作に留まってはいるものの、幾つか目を見張る小洒落たギャグが登場する。
例えば、飛行機が煙突に激突するシーンでは図のように背景に実写映像を使用。ド派手に崩落する煙突の妙な迫力が笑いを誘う。


他にも、『花火屋』(Fireworks)に飛行機が激突し、ボロボロになった看板はなぜか監督の名前『アイワークス』(Iwerks)になってしまうというダジャレ的なギャグもなかなか魅力的である。


なお、この作品を筆頭とする初期三部作が製作された後、平凡な少年だったウィリーは、グリム・ナトウイックを始めとするスタジオ在籍のアニメーター達によって丸々太った少年へとデザインが大変更される。変更されたのはデザインだけではなく、作品の雰囲気や色彩設計までもが、今までとは異なる独創的な領域に突入していくのだった……。



※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper

2018年3月5日月曜日

Dinky Doodle in the Hunt

監督:ウォルター・ランツ
公開日:1925年11月1日
評価:★6

若き日のウォルターランツが手がけた楽しい作品


後に『オズワルド』『アンディ・パンダ』『ウッドペッカー』等数々の人気キャラクターを手掛ける事となるウォルター・ランツは、20年代初頭にブレイ・スタジオで演出家としてのキャリアをスタートさせた。
この作品は、そんな彼がブレイスタジオで制作したシリーズ『ディンキー・ドゥードゥル』中の一作である。

このシリーズはフライシャーの『インク壺』のような、実写世界の中にアニメキャラが入り込み暴れ回るという愉快な趣向が凝らされている。まだアニメーションが『奇妙な代物』として扱われていたであろうこの時代、この実写併用のスタイルは大層観客に喜ばれた事だろう。
この作品でも、そんな実写とアニメが融合する事で生まれる魅力が存分に楽しめる一作となっている。

ストーリーはあってないような物で、狩りをしているランツ青年(実写)をディンキーと彼の愛犬がからかい、終いには大きな熊に追いかけられてしまうという代物である。


しかしこの作品の魅力は、ランツの怪演、粗削りだがのびやかで楽しい作画に集約されているといっても過言ではないだろう。
そののびのびとした牧歌的な魅力は、この時期の作品でしか味わえない特別な物なのではないだろうか。 たとえ作品のアイデアの大部分が『インク壺』『アリスコメディー』からの拝借だとしても…。


2018年2月27日火曜日

Babes in the Woods(魔法使いの森)

監督:バート・ジレット
公開日:1932年11月19日
評価点:★6

「シリ―・シンフォニー」の転換点


シリーシンフォニー第32作、カラー製作が開始されてから間もない頃に制作された一篇。古いおとぎ話「Babes in the woods」に、グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」のエッセンスを多分に入れながら独自に脚色して完成した『ディズニー流おとぎ話』である。

アニメーションについては1932年のディズニー作品と考えると概ね及第点と言うべきか。「魔女の家」や「不気味な森」の美術設定は、5年後の「白雪姫」にも繋がる怪奇的な魅力を放っている。また冒頭の魔女の岩を紹介するシークエンスについても、そのアニメーション、背景美術の美しさは特筆すべきであろう。

だが、キャラクターのデザインや作画に関しては…少し微妙と言わざるを得ない。特に子供たちのデザインについては―32年製作だという制作時期を考慮してもお世辞にも秀逸とは言えないー、かなり凡庸なものである。
小人についても同様で、同時期に制作された秀作『Santa's Workshop』(1932)とほぼ同じデザインにもかかわらずその魅力が『サンタ』に比べて充分に発揮できなかったのは残念だと言う他はない。

しかし、この作品が公開された32年11月に、ディズニーでは作品クオリティの向上を図るため、スタッフを集めてシュイナード美術学校の夜間部で独自にアート・クラスを開くようになる。
そのためこの作品以降、スタジオでは驚異的なスピードで作品の完成度が向上していくのだ。そういう意味では、この作品はディズニーにおける『古典的なアニメーション』からの転換点とも言えるだろう。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

2018年2月19日月曜日

A Lad and His Lamp

製作:ポール・テリー(実制作を担当した監督はクレジット未記載のため不明、フランク・モーザーか?)
公開日:1929年3月2日(3月10日とする文献あり)
評価:★6

典型的な20年代スタイルが楽しい作品


1920年代を通じて制作され続けた、サイレント期におけるポール・テリーを代表するシリーズ『Aesop's fables』。そのシリーズ中でも末期にあたる作品で、作品のトーキー化を巡ってオーナーであるヴァン・ビューレンと衝突したテリーはこの後4作品の製作を指揮した後スタジオを去る。
その後残留スタッフであるジョン・フォスターらによって同シリーズの製作は続行されるのだが、この作品ではまだそういった波乱が起きる直前の、20年代初期と何の変化もない『典型的なファーブルもの』な雰囲気を楽しむ事ができる。(恐らく音楽はテレビ用にフィルムが再販売された際に改めて付けられたものであり、本来はサイレント作品であったと思われる。)

美容室を営む女ネズミと、彼女を愛する勇敢な男ネズミ、ふたりの仲を引き裂こうとする悪い王様ネコとキャラクター設定もありきたり。ギャグも特別映えるものは殆ど見当たらず、こじんまりとしたストーリーが程良くスリリングに進むといった趣である。

ただ、この作品はこの時期のファーブル作品の中ではかなり出来が良い部類に入れるべき作品であろう。同時期の他の作品と比べてストーリーがかなりしっかりしており、作画も比較的滑らかに、かつ躍動的に動いているからだ。

特に男ネズミが猫の城に侵入後お化けに襲われるシークエンスに関しては、その背景の精密さや、20年代では異例といえる遠近感と躍動感のある作画が見受けられる、という点で特筆すべきである。

そしてもう一つ注目すべき点は、『ミッキーマウス』の短編『The Gallopin' Gaucho』(1928)と酷似したシーンが存在している事だ。
ディズニーの短編が公開されたのはこの作品が公開された4か月前の28年12月30日であり、この作品がミッキーを参考にしたかどうかはわからない。だが、いずれにしろトーキー移行期の作品群を知る上で興味深い作品である。

※収録DVD:Cartoon Rarities of the 1920s