2018年4月8日日曜日

わんわん火事だわん

監督(演出):田口真
製作年:1981年
評価点:★6

名匠・南家こうじが手がけた火災予防PRアニメ


現在も『みんなのうた』や『おかあさんといっしょ』で活躍する、音楽アニメにおいては他の追随を許さない名匠・南家こうじ氏がキャリア初期の1981年に手掛けた火災予防PRアニメ。約18分と比較的短くまとまっており、彼独特のタッチや軽快なアニメーションを存分に楽しむ事ができる快作に仕上がっている。

火の無い星からやってきた迷子の宇宙人チャッタ君、しっぽが燃えたトラウマから火事に詳しくなった犬のブラザー、明るい少年もん太とその友達が巻き起こす騒動とそれによって育まれる友情を描きながら、火災の予防を訴える内容となっている。テーマはまさに『火の用心』だ。
南家さんとは別の人物が担当した脚本・演出は至ってオーソドックス、娯楽作品として観ると少々物足りない。だがあくまでもこの作品は『啓発もの』という事を忘れてはならない。手堅くまとまっており、こういったジャンルに属するアニメーションの中ではかなり楽しめる部類に入るのではないだろうか。OPで流れるテーマ曲と映像もノリが良く、これだけでも充分楽しい作品である。(同じく『火災防止』をテーマとした『ザ☆ファイヤーGメン』には敵わないが…)

さて、南家さんのデザイン・作画だが…こちらも彼にしてはやや穏当というべきか。PR映画という媒体だからか、作画枚数もやや抑え気味な印象。表現技法もごく普通のセルアニメである。
もちろん注目すべき部分はいくらでもあり、例えば犬のブラザーが繰り広げる軽やかなアクション(特にOPでの動き)はまさに南家節とでも言うべきリズミカルな作画となっており観ていて非常に楽しい。また、野沢雅子演じるもん太少年とその仲間たち、両親らのデザインも、後の『スプーンおばさん』や『あんみつ姫』を思わせるコミカルなデザインとなっておりなかなか秀逸。宇宙人のチャッタ君も、同時期にみんなのうたで放映された『あさおきたん』を彷彿とさせる柔らかなタッチで好印象。やはりPRアニメでも、南家アニメの魅力は健在なのだ。
また、演じている声優も、千々松幸子さんや喜劇俳優の故・由利徹さん、後にキートン山田として活躍する山田俊司さん、そして野沢雅子さんと非常に豪華な顔ぶれが揃っている。

…と、この作品、今観ても十分色褪せない魅力を持っている。初期の南家アニメという点でも資料的価値は高く、南家ファンなら一度は見ておきたい作品である。
ところがこの作品、TV放送された実績は恐らく存在せず、現在はいくつかの公共施設にVHSや16mmフィルムが所蔵されているのみであり、視聴するのはなかなか困難になっているのが残念だ。幸運な事に筆者はある施設でこのVHSを視聴する機会を得たため、幻の映像を楽しむ事ができたのだった。圧倒的感謝…!

以下、スタッフ・キャスト情報(OP・EDクレジットより)

推薦  自治省消防庁
指導  東京消防庁

企画   社団法人日本損害保険協会
製作   英映画社
製作協力 旭プロダクション

提供 社団法人日本損害保険協会

(声の出演)
ブラザー  由利 徹
チャッタ君 千々松幸子
もん太   野沢雅子
お父さん  山田俊司
お母さん  吉田理保子
ひとみ   滝沢久美子
ゆたか   峰あつこ
(ぷろだくしょんバオバブ)

製作    服部悌三郎
脚本    小山高男

キャラクター・デザイン&作画 南家こうじ
画コンテ  菊田武勝

動画 福島康生(日本サンライズ)
仕上 富田誠一
背景 小関俊之

撮影 旭プロダクション
音楽 池多孝春
効果 小川勝男
録音 中里勝範(プロセンスタジオ)
現像 東洋現像所

演出 田口 真

製作協力 山浦勇一郎(旭プロダクション)
製作担当 長井 貢

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