2018年10月25日木曜日

The Headless Horseman

監督:アブ・アイワークス
公開日:1934年10月1日
評価点:★6

アブ・アイワークス版『スリーピー・ホロウの伝説』


MGMとの配給契約が切れ、スタジオの親会社であるセレブリティ・プロダクション自身によって配給されたアイワークス・スタジオの「コミカラー」シリーズ。本作は1933年から1936年にかけて全25本が製作されたうちの第7作目である。
原作は、アメリカではハロウィンの時期になるとよく語られるという「スリーピー・ホロウの伝説」。ディズニーも1949年にオムニバス形式の長編アニメ「イカボードとトード氏」の1パートとしてこの物語をアニメ化しているが、本作の公開年は1934年。ディズニーに先駆けること約15年である。

のどかな村スリーピー・ホロウに住む美しい女性カトリーナ・ヴァン・タスル。大柄な若者ブロム・ボーンズと気の優しい教師イカボード・クレインの2人は彼女に恋心を寄せていた。
ある日の学校では、イカボードが「首なし騎士の伝説」という恐ろしい本を読んでいた。そんな時、彼はカトリーナからパーティーに誘われる。おめかしをしてカトリーナの家へと赴くが、そこには忌々しきライバル・ブロムの姿が。パーティーが始まると、2人はなんとかしてカトリーナの気を引かせようと様々な手をつかって彼女にアプローチするのだが、なかなか決着がつかない。そこでブロムは帰路でイカボードが怖がっていた「首なし騎士」に仮装し、彼を脅かす事にする。ブロムの企みは成功し、イカボードは一目散にどこか遠くへと逃げていった。
そうしてブロムとカトリーナの結婚式が行われたのだが…そこに現れたのは首なし騎士。ブロムもカトリーナも式場から逃げ出してしまうが、首なし騎士の正体はなんとイカボードだったのだ。

本作の最大の見どころは、アブ自身が自動車の部品で作り上げたという独自のマルチプレーン・カメラを撮影に導入している点が挙げられる。特にタイトルカードを始めとする幾つかのカットで登場する、首なし騎士が馬に乗って駆けていく動画の迫力は目を見張るものがある。イカボードの机を回り込むカットなど、他にもマルチプレーン・カメラが使用されているシーンが幾つかあり、そのどれもが抜群な効果を上げているのが素晴らしい。
ただキャラクターデザインに関しては若干粗雑な部分が目立ち、カトリーナは美女というよりもぽっちゃりとしたベティ・ブープである。イカボードは初期のフライシャー作品に登場する爺さんを彷彿とさせるデザインだ。(当時のスタジオには元々フライシャーに在籍していた作画スタッフが多数在籍していたので、仕方ない事ではあるのだが…)
アイワークス作品のご多分に漏れず、ストーリーやギャグの面でもイマイチ感は否めない。特に中盤はありきたりな演出尽くしで中だるみしてしまっているのが残念。
とはいえ個々のカットの完成度やアニメーションの出来自体は素晴らしく、玉石混合の「コミカラー」の中ではなかなか出来の良い部類に入る佳作といえるだろう。

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