2018年10月29日月曜日

Felix the Ghost Breaker(フィリックスのオバケ騒動)

監督:オットー・メスマー
公開日:1923年1月1日
評価:★8

「幽霊は君を求めている」


シリーズがいよいよ大衆からの支持を獲得し、作品の質も向上し始める1923年に製作された作品。

フィリックスが墓場で寝ていると、うなり声と共に突然幽霊が現れる。幽霊にいたずらされて怒ったフィリックスは、幽霊の行く先を追う。すると幽霊はある農夫の家へと忍び込み、彼や彼の家畜を散々に苦しめているのだからさあ大変。農夫は警察に助けを求めるが、さすがの警察も幽霊には歯が立たない。
そこで今度はフィリックスが幽霊退治を試みる。散々に痛めつけられてしまうフィリックスだったが、機転を利かせて幽霊を追い詰めてみるとその正体はなんと不動産屋。恐怖につけこんで農夫に家を売らせようとしていたのだ。農夫が飼っているロバが彼を遠くへ突き飛ばし、物語は終わりを迎える。

フィリックスのデザインは依然としてリアルな黒猫に近く、彼らしいパーソナリティーを得るまでには至っていない。キャラクターのパントマイムを中心とした作画もまだこなれておらず、堅い印象を受ける。作画やデザインの面でフィリックスに変化が見られるようになるのは、メスマーのアシスタントだったビル・ノーランが『ラバーホース・スタイル』と呼ばれる独特の作画スタイルを確立する1924年頃からである。
しかし、どこか毒のあるユーモアや前衛的な怪奇描写など、後の作品に繋がる要素がこの作品からは多々見受けられる。特に、フィリックスが幽霊に襲われるシーンの魅力は現在でも全く色褪せていない。
メスマーはハイコントラストな画面作りの名手であり、フィリックス終了後(1937年以降)も30年以上に亘りネオンサイン用の影絵調アニメーションを多数制作していたという。[参考] 本作でもその手腕が存分に発揮されたといえるだろう。
例によって背景や人物は全て単色で描かれているが、この作品ではそれが一種の様式美を生み出しており、作品全体に漂う恐ろしい雰囲気を演出する事に成功している。
独特の怪奇描写が素晴らしい、メスマー版フィリックス中期の傑作である。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX (DVD2枚組)

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