2018年9月14日金曜日

Bold King Cole(勇敢な王様)

監督:バート・ジレット
公開日:1936年5月29日
評価:★6

ヴァン・ビューレン最後のフィリックス


ディズニー出身のアニメーター、バート・ジレットがヴァン・ビューレン・スタジオに移籍して手掛けたシリーズ『レインボー・パレード』。本作は、サイレント時代に絶大な人気を誇ったキャラクター『フィリックス』を主人公とした三部作の最終作である。
この作品が公開された後、フィリックスが主人公のアニメーション作品は1958年のテレビアニメ「とびだせフィリックス」まで製作されなくなる。フィリックスがアニメスターの座を離れている間、原作者のオットー・メスマーは一時期(1944-47年頃)かつて最大のライバルだったフライシャー・スタジオの後身であるフェイマス・スタジオで働いていたというのだから面白い。
本作の監督はバート・ジレット単独。後に彼がディズニー復帰後に監督した『ミッキーのお化け退治(Lonesome Ghosts)』(1937)を彷彿とさせる作品に仕上がっている。

木の上で楽しく歌を歌っていたフィリックスだったが、突然の嵐に見舞われお城に逃げ込む。その城の主は大ぼら吹きで臆病な王様だった。実はお城には幽霊がたくさん棲み付いており、おしゃべりで嘘つきな王様を凝らしめようと大暴れしてしまう。
フィリックスは雷を使って幽霊を撃退、喜んだ王様はフィリックスを王子にしてやるのだった。

本作も、前2作と同様にデザインや美術設定に関しては非常に洗練されており申し分ない出来である。特に嵐や幽霊といったホラー描写は良く表現できており、甘ったるい描写が目立つ「レインボー・パレード」としては出色の出来栄えといえる。
またウィンストン・シャープルズの音楽も素晴らしく、挿入歌の「Nature and Me」をはじめとするキャッチーな歌や軽快なBGMが作品の魅力を際立たせている。この作品に限らず、ヴァン・ビューレンの作品はとにかく音楽が良いのだ。
ただ、刺激的なユーモアや機知に富んだアイデアが乏しく、全体として平坦な作りになっているのが非常に残念。(これも残念なことにヴァン・ビューレン作品全体に言えることなのだが…)
前2作での最大の問題点だった「フィリックスの性格」も依然として改善しておらず、サイレント時代のブラックさは影を潜めて『勇敢な少年』になっているのも惜しい。

この作品が公開されてから5か月後の1936年10月、配給元だったRKOがディズニー作品の配給を始めた事をきっかけにヴァン・ビューレン・スタジオはアニメーション作品の製作を休止してしまう。そしてさらに2年後の1938年11月12日、ヴァン・ビューレン自身も心臓発作でその生涯を終えるのであった。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX (DVD2枚組)

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