2018年9月18日火曜日

Hot Dog(ハッドッグ)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年3月29日
評価:★7


フライシャーの転換点


『トーカートゥーン』第4作。この作品は、様々な意味でフライシャー・スタジオのターニングポイントとなった記念すべき快作である。「従来の作品との違い」は主に三つ挙げられる。
第一に、フライシャー作品としては初めて全編にセル画が用いられ、濃淡豊かな背景が使用できるようになった。第二に、トーキー初期のフライシャーを代表するキャラクターのビン坊が初登場した。第三に、音楽監督としてルー・フライシャーが参入し、従来よりもはるかに高い完成度で音楽とアニメーションの融合に成功したのである。

車を走らせるビン坊が、街中の女性を次々にナンパする。ナンパの途中で道路を壊してしまったビン坊は警察に捕まってしまい、『ジョニーが凱旋するとき』のメロディーと共に裁判所へと連行されてしまう。
無実を訴えるビン坊はおもむろにバンジョーを取り出し、『セントルイス・ブルース』を歌いだす。堅苦しい雰囲気だった裁判所もいつの間にかノリノリに。ビン坊はバンジョーを一輪車に見立ててそのまま裁判所を逃げ出すのだった。

アニメーターはノンクレジットだが、後にチャールズ・ミンツのスタジオへ移籍するシド・マーカスと1930年当時のスタジオを代表するアニメーターであるグリム・ナトウィックが幾つかのシーンを担当したと思われる。[参考]
特にシド・マーカスが担当したという「セントルイス・ブルース」のシーンは従来のフライシャー作品とは一線を画すクオリティーである。というのも、スキャットの口の動きやバンジョーをかき鳴らす手の動き、音楽にノる無機物たちの動き、全てが完璧に音楽と同期しているのだ。
トーキー初期におけるフライシャーの見どころといえば絶妙な「スウィング感」、つまりジャズとアニメーションの見事な融合が挙げられるのだが、この作品で初めてそれが本格的に実現したのである。
これには恐らく今作よりスタジオの作品に関わる事となったルー・フライシャーの存在が大きく影響していると思われる。ルーはマックス&デイヴの兄弟で、1942年までスタジオの音楽監督として作品に関わってきた。(彼はポパイのウィンピーの声も一部作品で担当している)

この作品は1931年頃に日本でも公開されたようだ。初期のベティ作品と同じく、観客たちを大層楽しませたことだろう。




(劇中で使用された「セントルイス・ブルース」の録音)

0 件のコメント:

コメントを投稿