2018年3月27日火曜日

The Air Race(ウィリーの飛行機猛レース)

監督:アブ・アイワークス
製作年:1933年
評価点:★6

ユーモアに満ち溢れた佳作


『カエルのフリップ』シリーズを一旦終了させたアイワークス・スタジオが、スタジオの顔として新たに創作した、大ボラ吹きの少年『ウィリー・ホッパー』が主演するシリーズの第一作。
このシリーズは『フリップ』よりも奇妙で不条理なギャグを前面に出しているのが特徴的なのだが、主人公『ウィリー』のデザインが以降の物と異なる今作においてもその独特の魅力は存分に楽しむ事ができる。
なお、この作品は配給側のMGMが作品内容に難色を示したため実際には劇場公開されなかったという、ある意味『幻のパイロット作品』とも言うべき代物でもあるのだ。(同年、本作品のプロット、一部のアニメーションを再利用したリメイク作『Spite Flight』が製作されている)

さて、この作品は以前アイワークスがディズニー時代において製作に関わった『The Ocean Hop』(1927)のリメイク作とも取れる内容となっている。
プロットもよく似ている。どちらも単純明快、愉快な飛行機レースなのだ。最もこちらは『ウィリー』が喋る壮大な作り話だった、という一ひねりしたオチがつく訳だが…。
他にも『悪役が主人公の飛行機のタイヤにガムをつけてレースを妨害する』など、ギャグに関しても共通する部分があるのが興味深い。

作品の質自体はそこそこ楽しめる凡作に留まってはいるものの、幾つか目を見張る小洒落たギャグが登場する。
例えば、飛行機が煙突に激突するシーンでは図のように背景に実写映像を使用。ド派手に崩落する煙突の妙な迫力が笑いを誘う。


他にも、『花火屋』(Fireworks)に飛行機が激突し、ボロボロになった看板はなぜか監督の名前『アイワークス』(Iwerks)になってしまうというダジャレ的なギャグもなかなか魅力的である。


なお、この作品を筆頭とする初期三部作が製作された後、平凡な少年だったウィリーは、グリム・ナトウイックを始めとするスタジオ在籍のアニメーター達によって丸々太った少年へとデザインが大変更される。変更されたのはデザインだけではなく、作品の雰囲気や色彩設計までもが、今までとは異なる独創的な領域に突入していくのだった……。



※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper

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