2018年2月19日月曜日

A Lad and His Lamp

製作:ポール・テリー(実制作を担当した監督はクレジット未記載のため不明、フランク・モーザーか?)
公開日:1929年3月2日(3月10日とする文献あり)
評価:★6

典型的な20年代スタイルが楽しい作品


1920年代を通じて制作され続けた、サイレント期におけるポール・テリーを代表するシリーズ『Aesop's fables』。そのシリーズ中でも末期にあたる作品で、作品のトーキー化を巡ってオーナーであるヴァン・ビューレンと衝突したテリーはこの後4作品の製作を指揮した後スタジオを去る。
その後残留スタッフであるジョン・フォスターらによって同シリーズの製作は続行されるのだが、この作品ではまだそういった波乱が起きる直前の、20年代初期と何の変化もない『典型的なファーブルもの』な雰囲気を楽しむ事ができる。(恐らく音楽はテレビ用にフィルムが再販売された際に改めて付けられたものであり、本来はサイレント作品であったと思われる。)

美容室を営む女ネズミと、彼女を愛する勇敢な男ネズミ、ふたりの仲を引き裂こうとする悪い王様ネコとキャラクター設定もありきたり。ギャグも特別映えるものは殆ど見当たらず、こじんまりとしたストーリーが程良くスリリングに進むといった趣である。

ただ、この作品はこの時期のファーブル作品の中ではかなり出来が良い部類に入れるべき作品であろう。同時期の他の作品と比べてストーリーがかなりしっかりしており、作画も比較的滑らかに、かつ躍動的に動いているからだ。

特に男ネズミが猫の城に侵入後お化けに襲われるシークエンスに関しては、その背景の精密さや、20年代では異例といえる遠近感と躍動感のある作画が見受けられる、という点で特筆すべきである。

そしてもう一つ注目すべき点は、『ミッキーマウス』の短編『The Gallopin' Gaucho』(1928)と酷似したシーンが存在している事だ。
ディズニーの短編が公開されたのはこの作品が公開された4か月前の28年12月30日であり、この作品がミッキーを参考にしたかどうかはわからない。だが、いずれにしろトーキー移行期の作品群を知る上で興味深い作品である。

※収録DVD:Cartoon Rarities of the 1920s

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