2018年2月16日金曜日

The Tortoise and the Hare(うさぎとかめ)

監督:ウィルフレッド・ジャクソン
公開日:1935年1月5日
評価点:★7

ギャグの新境地を開いたディズニーが放った快作


シリー・シンフォニー第49作。『Three Little Pigs』(三匹の子ぶた)でキャラに今までに無かった個性を与え、強烈な印象とギャグを観客に植え付ける事に成功したディズニーが再び放ったギャグアニメ―ション。
話の大筋、登場するキャラクターに関してはイソップ寓話の「ウサギとカメ」に沿っているが、この作品ではその有名な寓話に適度なスパイスを適度に加え、古き良き童話を痛快な快作に仕上げている。

まずウサギの設定から、今までに無かった個性が溢れている。吊り上がった目、スマートなスタイル、女たらしかつニヒルな性格。しかも甲高い声でよく笑う。所謂トリック・スター的なキャラ設定だが、これは後のウッドペッカーやダフィーダック、バッグスバニーへと発展していく様式の原型ではないだろうか。
対するカメ、こちらはもっぱら田舎臭く従来のディズニーデザインを踏襲したかのようなのんびりとした設定。この二つのキャラの対比が作品の面白さを更に深めているといえよう。

ストーリーは概ね原作を踏襲しておりしっかりと筋が通っているが、先程にも述べた通り幾つかのアレンジが加えられている。
例えばウサギは一旦昼寝をするもののすぐに飛び起き、その次には女たちとテニス遊びに興じている。彼の女たらしで陽気な一面が強調された名シーンである。
ここで彼は一人テニス、一人野球を次々と披露するのだが、この一連のシーンのスピード感たるや半端ではない。
対するカメはのんびり、コツコツとひたすらに走っている。こちらは大きなアレンジが加えられる事は無かったが、最後に首を伸ばしてゴールするといういかにもなギャグで締められる。

30年代の旧式なスタイルから、40年代のリアリティを重視しつつ破壊的なギャグを得意としたスタイルへと変化していく過程がわかる、興味深い作品である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

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