2018年4月20日金曜日

Sinkin' in the Bathtub(浮世風呂)

監督:ヒュー・ハーマン&ルドルフ・アイジング
公開日:1930年4月19日
評価:★5

伝説は、浴槽から始まった


1940年代から50年代にかけてアメリカン・カートゥーンの黄金時代を第一線で牽引し、アニメ史に残る数々の傑作を残した伝説の短編アニメシリーズ『ルーニー・テューンズ』。この作品は、そんな『ルーニー・テューンズ』の記念すべき第一作である。(正確には1929年にパイロット版である『Bosko, the Talk-Ink Kid』が製作されている)
当時ディズニーのヘッドアニメーターとして活躍していたヒュー・ハーマンとルドルフ・アイジング、そしてその門下であるイサドール・フレレング(後のフリッツ・フレレング)、カーマン・マックスウェルらがディズニーから独立、一年ほどウィンクラー・プロダクションで働いた後に、『ボスコ』という黒人少年を主人公としてワーナーで開始した新シリーズがこの『ルーニー・テューンズ』なのだ。
製作のメインとなるスタッフはディズニー出身者が中心であり、その上彼らが目指していた目標もディズニーと同じ成功を掴むという事だった。…となると作風がディズニーに限りなく近くなってしまうのは至極当然の事であり、それは明らかに『シリ―・シンフォニー』を意識したであろうシリーズタイトル『ルーニー・テューンズ』にもしっかりと現れている。

物語はかの『蒸気船ウィリー』と同じく、主人公ボスコが口笛を吹くシーンから始まる。浴槽の中で上機嫌にボスコが吹く口笛のメロディーはワーナー映画『The Show of Shows』の挿入歌である『Singin' in the Bathtub』。そう、『ルーニー・テューンズ』は元々ワーナーが製作したトーキー映画の宣伝の役割も兼ねて開始されたのだった。
風呂から上がったボスコは、ガールフレンドのハニーを連れてドライブに出かける。ところが道中で様々なトラブルに見舞われ…というあらすじ。至って平凡。
フレレングによるアニメーションは流石に良くできており、ボスコ達が崖から落ちるシーンでは優れたカメラアングルが目を引く。(ディズニー時代に制作された「Bright Lights」(1928)から使い回したアイデアではあるが…)
ところがこの作品、残念なことに少し退屈なのだ。目を見張るようなギャグも皆無、テンポも悪ければストーリーも平坦。長所を挙げるとすれば先述した優れたアニメーションと愉快な音楽、といったところだろうか。
ともかく、後にアメリカン・カートゥーンの歴史を塗り替える伝説のシリーズは、この作品から始まったのだ。

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