2018年4月27日金曜日

Mysterious Mose(ベティの恐怖の夜)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年12月29日
評価:★8

怪奇的なギャグが冴える傑作


『トーカートゥーン』第14作であり、ベティ・ブープが登場する三番目の作品である。今作に登場するベティは、少し色黒ではあるが前二作よりも少しお馴染みのデザインに近い姿でのお目見えとなる。
Barnacle Bill』や『Swing You Sinners!』と同じくポピュラー・ソングを作品の主題とした作品であり、前二作と同じくかなりの傑作に仕上がっている。やはりフライシャー製カートゥーンとジャズは、切り離すことのできない至高の組み合わせなのだろう。

更に今作は、前半部分がベティの初めてのソロシーンとなっている。『ミステリアス・モーゼ』を時折お色気ギャグを挟みながら、クネクネと歩きながら歌うベティの姿が実に愛らしく色っぽい。
ベティが物憂げに歌っている間に、謎の奇妙な影が彼女の家に侵入する。例によって影の正体はビン坊、ブルース『セント・ ジェームス病院』を口ずさみながら変幻自在に動き回る。この辺りのシークエンスも良い意味で荒唐無稽、テンポも良くて実に楽しい。この作品のビン坊は決まった姿を持っておらず、液体状になったり透明になったりと様々に変化するのだ。
ビン坊に心を奪われるベティだったが、再び曲が『ミステリアス・モーゼ』に変わりビン坊はさらにメタモルフォーゼを次々に展開していく。巨大なトロンボーンを吹き始めたかと思えば終いには爆発してしまい、機械の部品となってバラバラになる。

あらすじなんてこういうタイプのカートゥーンには必要ないのかもしれない。何はともあれこの作品は、色気づいてきたベティやハチャメチャに動くビン坊の愉快なアニメーションを愉しむ一点に尽きるだろう。作画はウィラード・ボウスキーとテッド・シアーズだが、グリム・ナトウィックも一部のシーンに関わっているとの事。30年代のフライシャーはどちらかというとパキッとした作画が特徴のスタジオなのだが、1930年の時点ではまだその傾向はあまり見られず、荒々しい伸び伸びとした動きが楽しめる。

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