2018年10月18日木曜日

The Cookie Carnival(クッキーのカーニバル)

監督:ベン・シャープスティーン
公開日:1935年6月29日
評価点:★8

まさに「お菓子」のような甘い魅力を持つ傑作


シリー・シンフォニー第53作。公開年は1935年、この年には他に『うさぎとかめ(The Tortoise and the Hare)』『音楽の国(Music Land)』『誰がコック・ロビンを殺したの?(Who Killed Cock Robin?)』といった傑作群が立て続けに発表された。1930年代のカートゥーンを代表するこのシリーズも、30年代中期に差し掛かりまさに円熟の域に入っていたと言える。
さて、この作品はタイトル通り「お菓子の国」を舞台にした作品で、登場人物たちも皆クッキーなどのお菓子を擬人化したキャラクターとなっている。背景美術もお菓子がモチーフとなっており、同時期のシリー・シンフォニー作品の中でも異彩を放っているといえるだろう。

お菓子の国では、今日は楽しいカーニバルの日。カーニバルでは、一番美しい女を女王にするためのコンテストが開かれていた。そんな賑やかなカーニバルをよそに、綺麗な服を持っていないためにコンテストに出られないと嘆くクッキーの女の子。たまたま女の子の近くを通りかかった浮浪者のクッキーは、お菓子を使って女の子を美しい女性に仕立て上げてやるのだった。
さて、めでたく彼女はコンテストに出場。圧倒的な美貌により見事優勝し、女王に選ばれる。女王が決まったのなら王様も決めねば、という事で今度は王様のコンテストが開かれる。天使のケーキや悪魔のケーキなどたくさんの候補者が集まるが、女王はどれもお気に召さない様子。(この時の女王の表情が実にカワイイのだ)
それならと審査員自らが王様に立候補するが、そこへ現れたのが浮浪者のクッキー!女王は「王様に何をするの」と叫び(浮浪者クッキーの帽子は、守衛に殴られた時王冠のように割れていたのだ)、浮浪者のクッキーは王様に選ばれる。

王様が選ばれたことでパレードの盛り上がりは最高潮に達し、二人は熱いキスを交わすのだった。

さて、この作品ではアイワークス・スタジオから移籍してきたばかりのグリム・ナトウィック、テリー・トゥーンから移籍してきたばかりのビル・タイトラという二人の敏腕アニメーターが作画に大きく携わっているという点でも興味深い。
ナトウィックは浮浪者クッキーが女の子を美しい女王に仕立て上げるシーン、タイトラは天使のケーキと悪魔のケーキがダンスをするシーンをそれぞれ担当しているが、いずれのシーンもこの作品の中で特に印象深い場面である。
特にナトウィックが担当したドレスアップのシーンは、アニメ史に残る名場面といえるのではないだろうか。ベティ・ブープの生みの親であり後に白雪姫の作画にも携わる彼がアニメ―トした女の子の美しさ、可愛さ、色気は全く並大抵ではない。
フライシャー時代の荒っぽさがまだまだ残っており洗練されたアニメーションとは言い難いが、独特の野暮ったい作画の癖にまで一種の愛らしさを覚えるのである。
往年のチャップリンを彷彿とさせる浮浪者クッキーも、なかなか味わい深いキャラクターで好印象だ。(声はディズニー御用達であるピント・コルヴィッグが好演している)
まさにお菓子のような甘い魅力を持つ、素敵な作品である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]

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