公開日:1932年11月19日
評価点:★6
「シリ―・シンフォニー」の転換点
シリーシンフォニー第32作、カラー製作が開始されてから間もない頃に制作された一篇。古いおとぎ話「Babes in the woods」に、グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」のエッセンスを多分に入れながら独自に脚色して完成した『ディズニー流おとぎ話』である。
アニメーションについては1932年のディズニー作品と考えると概ね及第点と言うべきか。「魔女の家」や「不気味な森」の美術設定は、5年後の「白雪姫」にも繋がる怪奇的な魅力を放っている。また冒頭の魔女の岩を紹介するシークエンスについても、そのアニメーション、背景美術の美しさは特筆すべきであろう。
だが、キャラクターのデザインや作画に関しては…少し微妙と言わざるを得ない。特に子供たちのデザインについては―32年製作だという制作時期を考慮してもお世辞にも秀逸とは言えないー、かなり凡庸なものである。
小人についても同様で、同時期に制作された秀作『Santa's Workshop』(1932)とほぼ同じデザインにもかかわらずその魅力が『サンタ』に比べて充分に発揮できなかったのは残念だと言う他はない。
しかし、この作品が公開された32年11月に、ディズニーでは作品クオリティの向上を図るため、スタッフを集めてシュイナード美術学校の夜間部で独自にアート・クラスを開くようになる。
そのためこの作品以降、スタジオでは驚異的なスピードで作品の完成度が向上していくのだ。そういう意味では、この作品はディズニーにおける『古典的なアニメーション』からの転換点とも言えるだろう。
※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]