2018年2月5日月曜日

なまくら刀(新最長版)

監督:幸内純一
公開日:1917年6月30日
評価:★7

3度の発掘を経て鮮やかに蘇った日本アニメの原点


日本アニメの歴史について少しでも知っている方は、一度は聞いた事があるであろう、現存する日本最古の商業アニメーションといわれる記念碑的作品『なまくら刀』。
これまで2007年、2014年の2回に亘り発掘・復元されてきた。(それ以前にもフィルムコレクターの杉本五郎氏がフィルムを所持していたらしいが、1971年の火事で焼失したとの事[出典])
今回『発掘された映画たち2018』にて上映されたバージョンは、去年発掘されたフィルムを加え新たに復元処理を施した新最長版。今まで確認されていなかった幾つかのシークエンスを追加した上での上映となった。

ストーリーは至ってコミカルかつ明朗である。刀を買った侍が、試し斬りをしようと按摩と飛脚に襲い掛かるが、逆にまんまとやられてしまい、挙句の果てには刀まで折れ曲がってしまうというオチが付く。

この作品の最大の魅力は、やはり卓越した人物描写の細かさが挙げられる。切り紙アニメの長所を上手く生かした作風となっており、キョロキョロ動く目や豊かな表情、その全てが生き生きとしている。また後半の影絵をモチーフとした演出も素晴らしい。
日本アニメ最初期の作品にして、完成された繊細かつコミカルな雰囲気を既に築き上げていたというのはまさに驚くべき事である。

今回上映された『新最長版』では、今回新たに発掘されたシーンが幾つか追加された。
まず按摩が侍を蹴飛ばした後にニヤリと笑うシーンだが、これには実は続きがあり、この後按摩は大口を開けて笑うのである。
また、飛脚が侍から逃げるシーンも今回新たに発掘され、飛脚が木陰に隠れたりといった幾つかの細かいネタがこの一連のシーンで行われていた事も判明した。

こうして日本アニメ最初期の快作が3度の発掘を経て、ほぼ完全な形で見る事ができるようになったのは幸運以外の何物でもない。
『なまくら刀』のみならず、黎明期の日本アニメが更に発掘され、注目を浴びていく未来が来てほしいものである。


なまくら刀[デジタル復元・最長版][白黒ポジ染色版] | 作品詳細 | 日本アニメーション映画クラシックス

なまくら刀[デジタル復元・最長版][白黒ポジ染色版] (The Dull Sword [the longest, digitally restored version]) 製作年:1917年 監督:幸内純一。国産アニメーション映画が誕生した1917年に公開された現存する最古の作品。
(『発掘された映画たち2018』にて上映)

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