公開日:1933年11月11日
評価点:★8
アイワークス・スタジオが突如放った、狂気に満ちた傑作
『ウィリー・ホッパー』第4作となるこの作品から、それまでは普通の少年としてデザインされていた主人公のウィリーが、まるで風船のように丸々と太ったデザインに変更された。
変更されたのはデザインだけではなく、それまでのアイワークス・スタジオが持っていた些か牧歌的といえる作風まで大転換が行われた。
変更されたのはデザインだけではなく、それまでのアイワークス・スタジオが持っていた些か牧歌的といえる作風まで大転換が行われた。
そう、『ウィリー・ホッパー』は後のボブ・クランペットによる『Porky in Wackyland』(1938)を彷彿とさせる、悪夢のような世界観、シュールなキャラクター造形、前衛的な劇伴音楽(奇しくも音楽担当はどちらもカール・スターリングである)を持ち味とする狂気のカートゥーンに生まれ変わったのである。
そんな狂気が持ち味となったこのシリーズの中でも、特にトチ狂った佳作と呼ぶべきなのがこの作品。
奇妙な宇宙空間をさまよった挙句彼が着いたのは、逆再生語を話す謎の科学者が怪しげな動物実験を繰り返す、奇妙極まりない惑星だった。実験材料にされそうになったウィリーは慌てて逃走するが、行く先々で『Wackyland』を先取りしたようなキャラクターに邪魔される。BGMも良い感じにミステリアス、カール・スターリングの本領発揮といったところか。そんな彼は突如現れた美女に誘惑されるが、その美女の正体は先程の科学者。
ついに捕まってしまった彼だったが…実は今までの出来事は全部麻酔ガスを吸った彼が見た悪夢だった、というオチがついて物語は終わる。
この作品でアブは、セルと背景はカラーで塗り撮影は白黒で行う、という興味深い試みを行っている。その結果、作品からは従来とは異なる独特の空気感が漂うようになったという。
そんなスタジオの創意工夫のあとも垣間見る事ができる、興味深い作品だ。
(惜しむらくは現在残っているプリントの状態があまり良くない、という事だろうか…)
そんなスタジオの創意工夫のあとも垣間見る事ができる、興味深い作品だ。
(惜しむらくは現在残っているプリントの状態があまり良くない、という事だろうか…)
※収録DVD:Ub Iwerks' Willie Whopper