2018年11月24日土曜日

The Barn Dance(バーン・ダンス)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1929年3月14日
評価:★7


生意気なキャラクターがキュートな佳作


「ミッキーマウス」第4作。前作の『蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)』に引き続き当初よりトーキー作品として製作されたが、本作は音楽劇ではなくストーリーとギャグが主体である。そのため前シリーズの「オズワルド」を彷彿とさせる楽しい作品に仕上がっており、生意気で野暮ったいキャラクター達が巻き起こす騒動を存分に楽しむことができる。
作画は主にアブ・アイワークスとレス・クラークの2人が担当したようである。本作でもアブのスマートで軽快なアニメ―トが冴えている。

「おんまはみんな(The Old Gray Mare)」のメロディーに乗せて馬車を走らせるミッキー。彼はミニーをバーン・ダンスに誘おうとしたのだが、不運にも同じくミニーをダンスに誘おうとしたライバル、ピートが車でやってくる。ピートの車に惹かれたミニーはピートをダンスの相手に選ぶが、その直後に車が事故を起こしてしまう。そこでミニーはミッキーと共にダンス会場へと向かうのだったが…
なんとミッキーは踊りが大の苦手だったのだ。ミニーの足を何回も踏んづけてしまったので、カンカンになったミニーは踊りの上手なピートを次の相手に選んでしまう。嫉妬したミッキーは機転を利かせてズボンに風船を仕込み、今度こそミニーと上手に踊ろうと画策する。
ところが仕掛けに気付いたピートがパチンコで風船を割ってしまったために、この作戦も失敗。とうとうミニーが愛想を尽かしてしまったので、ミッキーは泣き出してしまうのだった。

悪役が主人公の恋敵として登場し、ヒロインを巡って争うという図式は「オズワルド」を始めとするサイレント時代のディズニー製カートゥーンではよく見られるスタイルであった。本作のプロットやギャグはサイレント時代からの大きな変化はないが、踊りを作品の中心に据えているのはトーキー作品らしい。
本作の見どころは、少し生意気だが生き生きとしたキャラクター達のキュートさに尽きる。現在でこそ「スター」「品行方正」といったイメージが定着してはいるが、1932年頃までのミッキーはいたずらっぽく快活で、少し生意気な少年だった。性格に深みはないが、とにかく元気で明るい典型的なカートゥーン界の住人だったのだ。
また、サウンドトラックも興味深い。本作で使用されている曲は「おんまはみんな」「いいやつみつけた(Pop Goes the Weasel)」「Reuben and Rachel」といった古いフォークソングが中心であり、ポピュラー音楽を所狭しと使いまくっていたフライシャー兄弟やハーマン=アイジングの作品とは対照的である。
そもそも「バーン・ダンス」自体がアイルランドの古い習慣だったらしく、アイルランド系の移民であるウォルトの嗜好が伺える。



収録DVD:ミッキーマウスDVDBOX vol.1

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