2018年8月21日火曜日

Northwest Hounded Police(迷探偵ドルーピーの大追跡)

監督:テックス・アヴェリー
公開日:1946年8月3日
評価:★10

悪夢的なギャグが素晴らしい、私的ドルーピー最高傑作

ドルーピーが出演する4番目の作品。ドルーピー第一作である『つかまるのはごめん(Dumb-Hounded)』のリメイク作であり、数あるドルーピー出演作の中でも最高傑作(と私は思っている)にあたる名作である。
作画はディズニー出身のウォルター・クリントン、エド・ラヴ、レイ・エイブラムス、そしてプレストン・ブレアの4人。MGM作品ではお馴染みの面々である。
まあこの作品、素晴らしいのなんの。基本的なストーリーはリメイク元である『つかまるのはごめん』を踏襲しているが、ギャグは更にエスカレートし狼のリアクションも冴えに冴え渡り、問答無用の大傑作となった。

アルカ・フィズ刑務所を脱獄したオオカミ。北国に逃げた彼を捕らえるべくドルーピーが彼を追う事になった。追手に気付いたオオカミは急いで小屋に逃げ、一安心したかと思えばなんとそこにいるのはドルーピー!オオカミは山の頂上、海底、空港、映画館と様々な場所へ逃げ回るがどこに行ってもドルーピーが待ち構えている。哀れなオオカミは待ち構えるドルーピーを見る度に超絶的なリアクションを披露。
それならと整形手術を試してみるが整形後の顔はドルーピー、実は外科医の顔もドルーピー。絶望したオオカミはライオンの口の中へと飛び込むがそこにもなんとドルーピー。最終的に彼が逃げ込んだ場所は刑務所の檻の中、これでやっとドルーピーの顔を見なくて済むと安堵するのだったが…。衝撃のオチが待ち構えている。

全く、何もかもが素晴らしい作品。まず、冒頭から電気椅子の入り口に『お座り下さい』なんて看板がかかってあるというブラックなギャグが炸裂するのだから最高だ。鉛筆で扉を描いてそこから脱獄する、という『Porky in Wackyland(ポーキーのヘンテコランド)』を彷彿とさせるアニメらしいギャグも楽しい。
そして何より、オオカミが慌てふためき逃げ回るリアクションの面白さ。目ん玉は飛び出し顎は外れ手足はバラバラに…いやはや、『アヴェリー節』全開である。
特に映画館のシークエンスは素晴らしく、「逃げ回る余りフィルムから飛び出してしまう」という『つかまるのは~』から流用したギャグに始まり、スクリーンに映し出されるのはドルーピーだというメタ的なギャグ、そしてそれを見たオオカミのとんでもない驚きっぷり、どれもが最高に面白い。
スコット・ブラッドリーによる音楽ももちろん抜群、作品に満ちている狂気をさらに増幅させている。
オオカミが逃げ回る先にはいつもドルーピーがいる、たったそれだけの事が7分に亘って繰り返されるのに、なぜこんなに面白いのか。とにかく、悪夢的なギャグが冴え渡る奇跡の傑作なのである。


収録DVD:Tex Avery's Droopy: The Complete Theatrical Collection

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