2018年6月11日月曜日

Silly Scandals(ビン坊の寄席見物)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1931年5月23日
評価:★7

歌うベティと幻想的なクライマックスに見惚れる一作


『トーカートゥーン』第22作。ベティ・ブープもこの頃になるとビン坊に代わるスタジオの新たなスターとなり始めており、本作でも1930年にヒットした『You're Driving Me Crazy』を一曲披露してくれる。この作品の見どころは、ずばりこのベティの歌声と、後述するクライマックスの名シーンの2つに尽きるのである。

寄席(ヴォードヴィル)のポスターを街中で見かけたビン坊は、お金が無いのでどさくさに紛れて劇場に潜入する。これが本当の"びんぼう"なんちって… 舞台からベティが登場し、名曲『You're Driving Me Crazy』を披露。ビン坊は客席からベティと一緒に歌い出し、他の観客たちに睨まれてしまう。
続いて手品師が登場するのだが、ビン坊が彼の手品を見て大笑い。怒った手品師は催眠術を使ってビン坊を舞台へ誘導し、ビン坊は様々な魔術をかけられてしまう。終いには頭をポカリと一撃され、映像もサイケデリックに一転、目まぐるしいテンポで変化するアニメーションの中で先程の『You're Driving Me Crazy』を歌い上げるのだった。

この作品でもベティはセクシーさが強調されており、歌っている途中でドレスがずり落ちブラジャーが丸見えになる、なんていうギャグもある。また太ももにガーターベルトを付けているなど、現在知られているスタイルにぐっと近づいている。
そして何より、この作品の肝はシュールで幻想的なラストシーン。ビン坊の顔が分裂し結合し、次々に様々な形に変わっていく。ビン坊だけではなく、背景までもが目まぐるしく変化し動きまくる。まさにサイケデリックなアニメーションが次々に展開していくのだ。

ストーリーは平板で、作品前半では目立ったギャグやアニメ―トも少ない凡作なのだが、このラストシーンが素晴らしすぎるが故に、私にとってはシリーズ中で最も強烈な印象を残した作品の一つなのである。クレジットが散逸したために、作画者が不明なのがつくづく惜しい。私の予想ではシェイマス・カルへインやアル・ユーグスター辺りのような気がするのだが…どうなんだろう。(Wikipediaではグリム・ナトウィックが作画者となっているのだが、本当なんだろうか?)




(ルディ・ヴァリーが歌う『You're Driving Me Crazy』。当時人気絶頂だった彼は『スクリーン・ソングス』にも数多く出演していた)

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