2018年6月27日水曜日

Dancing on the Moon(月へハネムーン)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1935年7月12日
評価:★7

新婚旅行は月で!ユニークなアイデアが魅力的な作品


『カラー・クラシック』第6作。当時ディズニーが三色式テクニカラーを独占していたため、本作は発色が劣る二色式テクニカラーで撮影されている。とはいえ、この作品はかなり状態の良いプリントが現存しており、三色法にも劣らない鮮やかな色彩が楽しめる。
作画は、後にフェイマス・スタジオの代表的な演出家となるシーモア・ネイテルと、『ベティの白雪姫(Snow White)』を始めとする多くのフライシャー作品に携わったローランド・クランドル。2人は当時フライシャー・スタジオのヘッドアニメーターで、ウィラード・ボウスキーやマイロン・ウォルドマンらと共に30年代のスタジオを代表する存在であった。

『月(ムーン)でハネムーンを』と、新婚夫婦たちが主題歌の『Dancing on the Moon』を歌いながら次々と月行きの宇宙船に乗り込んでいく。遅刻してしまった猫の夫婦も慌てて宇宙船に乗ろうとするが、むりやり乗り込もうとしたところでロケットが発車してしまった。宇宙船から振り落とされてしまった花嫁は激怒、宇宙船に取り残されてしまった花婿は一人寂しくトランプなどをして過ごすのだった。
宇宙船は宇宙空間をどんどん突き進んでいき、あっという間に目的地の月に到着。そこでは、見渡す限りの壮大な月世界風景が広がっていた。カップルたちは月世界での甘いひと時を楽しんでいたが、猫の花婿だけは一人悲しそうに座り込んでいるのだった。新婚夫婦たちがダンスを嗜んでいる時も、猫の花婿は寂しく一人で踊る他はなかった。
ダンスの時間が終わると、宇宙船は地球へと舞い戻る。ハネムーンには赤ちゃんが付き物、コウノトリが地球に帰ってきた夫婦たちへ子供をプレゼントするのだった。
ところが花嫁を連れて行けなかった猫の花婿のもとには子供が訪れず、彼は途方に暮れてしまう。そして、花婿の帰りを待っていた花嫁が駆け寄ってきて、哀れな花婿をぼこぼこに殴り倒してしまうのだった。

少々猫の花婿が不憫すぎる気はするが、『カラー・クラシック』にしては珍しく作品全体にユーモアに満ちており、楽しい一編である。何より、『ハネムーン』を文字通り『月旅行』に仕立て上げるという、フライシャーらしいユニークなアイデアには感嘆するばかりだ。また、『天の川(Milky Way)』で牛が乳を絞られていたり、月がまるであの『月世界旅行』のような姿になるなど、シニカルなギャグも随所に散りばめられており、こちらも面白い。
本作でも立体模型を用いたセットバック撮影(ステレオプティカル・プロセス)が採用されており、作品に素晴らしい遠近感を与えている。新婚夫婦たちがダンスを踊るシーンでの月世界の風景は特に魅力的で、この撮影技法の良さが最大限に発揮されたといえるだろう。
アニメート技術は、30年代中期のフライシャーとしては水準程度。いかにも『1930年代のカートゥーン』な動物キャラたちが、かわいく動き回るのが楽しい。



※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland

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